乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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73点
同じ題材の映画でもこれだけ内容が違うのだ!
アカデミー外国語映画賞にノミネートされた作品、主役を演じた浅野忠信が一躍脚光を浴びて話題になった。舞台はモンゴル、主役はチンギス・ハーン・・・「ん?」この設定は最近どこかで聞いたぞ。そう昨年公開された「蒼き狼 地果て海尽きるまで」である。今更この映画を語るつもりはないのだが、まぁ個人的には面白くない映画だった。しかし今回の映画は映像の迫力・構成・役者の存在感、何を取ってもレベルが桁違い、「ああ、全然違う!」と思わせる一大スペクタクル映画に仕上がっていた。
浅野忠信も全く日本人のニオイを感じさせず、チンギス・ハーンとして一人のモンゴル戦士になりきっていた。言葉や習慣の壁はかなり高かったと思うが、ただただ熱演に感服させられた。「蒼き狼」と比較しても仕方がないのだが、やはり演出次第で人間とはここまで一つの役に染めることができるということを証明してくれた。
どうやら三部作の構想もあるらしく、このテンションを保てるのであれば観てみたいと思った。
<GOOD POINT>
1.雄大なモンゴルがスクリーンに拡がっている。これは本当に雄大な画だった。大モンゴル平原は下手をすると只の原っぱにしか写らない。しかし山脈や川の流れや季節の移り変わりなど、大自然と真摯に向き合った映像がここにある。
2.接近戦が迫力満点!ハイスピードカメラを使って血しぶきや泥がとてもリアルに描かれている。槍で人を貫くカットも良くできていると思うし、とてもリアリティがあって良かった。個人的には最後の天下分け目の決戦よりも、嫁さんを奪還する戦いの方が断然素晴らしいと思う。
3.「モンゴルでは○○は掟である」というセリフが何度か出て来る、俺はよく知らなかったが当時のモンゴル人は先人が作ったいくつもの掟を愚直に守っている。そういった風土・歴史観が丁寧に描かれている為、観客は知らない国の話しなのに登場人物に感情移入できる。こういった小さな工夫が沢山積み重ねられた作品である。
<BAD POINT>
1.クライマックス「天下分け目の決戦」で引きの画で両軍が激突するシーンをCGで描いているが、これがとても安っぽくゲームを観ているみたいだ。せっかくリアリティのある戦闘シーンを描く力があるのに残念で仕方がない、ここも本物を激突させるか予算的に無理であれば引きの画とは違う方法で何か考えた方が良かった。このカットからやたらとCGが多用されているが逆効果、稲光のシーンも妙に嘘くさくてテンションが急激に落ちてしまった。
(IE5)
モンゴル - goo 映画
同じ題材の映画でもこれだけ内容が違うのだ!
アカデミー外国語映画賞にノミネートされた作品、主役を演じた浅野忠信が一躍脚光を浴びて話題になった。舞台はモンゴル、主役はチンギス・ハーン・・・「ん?」この設定は最近どこかで聞いたぞ。そう昨年公開された「蒼き狼 地果て海尽きるまで」である。今更この映画を語るつもりはないのだが、まぁ個人的には面白くない映画だった。しかし今回の映画は映像の迫力・構成・役者の存在感、何を取ってもレベルが桁違い、「ああ、全然違う!」と思わせる一大スペクタクル映画に仕上がっていた。
浅野忠信も全く日本人のニオイを感じさせず、チンギス・ハーンとして一人のモンゴル戦士になりきっていた。言葉や習慣の壁はかなり高かったと思うが、ただただ熱演に感服させられた。「蒼き狼」と比較しても仕方がないのだが、やはり演出次第で人間とはここまで一つの役に染めることができるということを証明してくれた。
どうやら三部作の構想もあるらしく、このテンションを保てるのであれば観てみたいと思った。
<GOOD POINT>
1.雄大なモンゴルがスクリーンに拡がっている。これは本当に雄大な画だった。大モンゴル平原は下手をすると只の原っぱにしか写らない。しかし山脈や川の流れや季節の移り変わりなど、大自然と真摯に向き合った映像がここにある。
2.接近戦が迫力満点!ハイスピードカメラを使って血しぶきや泥がとてもリアルに描かれている。槍で人を貫くカットも良くできていると思うし、とてもリアリティがあって良かった。個人的には最後の天下分け目の決戦よりも、嫁さんを奪還する戦いの方が断然素晴らしいと思う。
3.「モンゴルでは○○は掟である」というセリフが何度か出て来る、俺はよく知らなかったが当時のモンゴル人は先人が作ったいくつもの掟を愚直に守っている。そういった風土・歴史観が丁寧に描かれている為、観客は知らない国の話しなのに登場人物に感情移入できる。こういった小さな工夫が沢山積み重ねられた作品である。
<BAD POINT>
1.クライマックス「天下分け目の決戦」で引きの画で両軍が激突するシーンをCGで描いているが、これがとても安っぽくゲームを観ているみたいだ。せっかくリアリティのある戦闘シーンを描く力があるのに残念で仕方がない、ここも本物を激突させるか予算的に無理であれば引きの画とは違う方法で何か考えた方が良かった。このカットからやたらとCGが多用されているが逆効果、稲光のシーンも妙に嘘くさくてテンションが急激に落ちてしまった。
(IE5)
モンゴル - goo 映画
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76点
この手の映画はもう飽きたと思っている貴方へ・・・
最近の邦題を見ているとやたらと「○○ボーイズ」や「○○ガールズ」が多くてゲンナリしてしまう。もちろんこれは矢口史靖監督の「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の大ヒットに寄る影響が大きいのだろうが、それにしても多すぎてバカっぽい、製作サイドはもう少し頭を使った方が良いと思う。それでこの作品、タイトルにボーイズやガールズは付かないが予告編で「シンクロ」「ジャズ」の次は「合唱」というような宣伝を打っていた。もう少しオリジナル的な宣伝文句はなかったのだろうか。
そういう不満もありながらも観てしまったのだが、意外にも面白かった。もうこの手の学園音楽映画はパターンもある程度決まっていると決め込んでいたが、なかなか工夫と意外性で勝負していると感じる意欲作。まぁマンガみたいな演出もあるのだが、歌(この映画でいう合唱)の魅力という意味では良く出ている、映画の可能性は限りないという所を改めて考えさせられた。
<GOOD POINT>
1.完全にブレイクした夏帆がとても面白いキャラを演じている。美少女というイメージを完全に逆手にとった自意識過剰で嫌みな女子高生という役を考えたのが映画を一番面白くした要素だと思う。
2.コメディ映画として完全に確立させているのはゴリのおかげ。35歳の男が高校生を演じているのだが、全く違和感が無いところが素晴らしい。夏帆と港で話しているシーンがこの映画の面白さを決定したと感じた。
3.合唱で歌う曲が良い!尾崎豊の「15の夜」は最高に気持ちよかった。合唱の力を感じさせる見事なアレンジと歌唱力、素直に拍手を送りたい。もちろん不良に尾崎を歌わせるアイデアにも拍手。
<BAD POINT>
1.序盤の30分は「これは面白いか面白くないか、どっちに転ぶんだろうか?」と思うほどに危うい展開で、演出も迷っている感じがした。全体的に序盤だけが妙に漫画的で浮いているのである。まぁ中盤以降は忘れてしまうのだが、全体的な統一感は少し薄らいである。やはり劇中のCG文字は映画で使うと安っぽく見える。
2.間寛平があまり面白くない・・・というか完全にミスキャストと思うのだが。キャラの立つお爺ちゃんという意味で選んだと思うが、全く面白さに欠けている。吉本新喜劇の寛平を狙ったのかも良く分からず、なんか中途半端な印象だけが残った。
(IE5)
うた魂♪ - goo 映画
この手の映画はもう飽きたと思っている貴方へ・・・
最近の邦題を見ているとやたらと「○○ボーイズ」や「○○ガールズ」が多くてゲンナリしてしまう。もちろんこれは矢口史靖監督の「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の大ヒットに寄る影響が大きいのだろうが、それにしても多すぎてバカっぽい、製作サイドはもう少し頭を使った方が良いと思う。それでこの作品、タイトルにボーイズやガールズは付かないが予告編で「シンクロ」「ジャズ」の次は「合唱」というような宣伝を打っていた。もう少しオリジナル的な宣伝文句はなかったのだろうか。
そういう不満もありながらも観てしまったのだが、意外にも面白かった。もうこの手の学園音楽映画はパターンもある程度決まっていると決め込んでいたが、なかなか工夫と意外性で勝負していると感じる意欲作。まぁマンガみたいな演出もあるのだが、歌(この映画でいう合唱)の魅力という意味では良く出ている、映画の可能性は限りないという所を改めて考えさせられた。
<GOOD POINT>
1.完全にブレイクした夏帆がとても面白いキャラを演じている。美少女というイメージを完全に逆手にとった自意識過剰で嫌みな女子高生という役を考えたのが映画を一番面白くした要素だと思う。
2.コメディ映画として完全に確立させているのはゴリのおかげ。35歳の男が高校生を演じているのだが、全く違和感が無いところが素晴らしい。夏帆と港で話しているシーンがこの映画の面白さを決定したと感じた。
3.合唱で歌う曲が良い!尾崎豊の「15の夜」は最高に気持ちよかった。合唱の力を感じさせる見事なアレンジと歌唱力、素直に拍手を送りたい。もちろん不良に尾崎を歌わせるアイデアにも拍手。
<BAD POINT>
1.序盤の30分は「これは面白いか面白くないか、どっちに転ぶんだろうか?」と思うほどに危うい展開で、演出も迷っている感じがした。全体的に序盤だけが妙に漫画的で浮いているのである。まぁ中盤以降は忘れてしまうのだが、全体的な統一感は少し薄らいである。やはり劇中のCG文字は映画で使うと安っぽく見える。
2.間寛平があまり面白くない・・・というか完全にミスキャストと思うのだが。キャラの立つお爺ちゃんという意味で選んだと思うが、全く面白さに欠けている。吉本新喜劇の寛平を狙ったのかも良く分からず、なんか中途半端な印象だけが残った。
(IE5)
うた魂♪ - goo 映画
89点
これこそがハリウッド版のゴジラだ!
ちょうど10年前にゴジラがハリウッドでリメイク、「GODZILLA」として逆輸入された。アメリカの宣伝効果もあり「日本が生んだ怪獣映画がどのようにパワーアップして帰ってくるのか」というファンの期待感は相当に高まっていたかと思う。しかしいざ蓋を開けてみるととんでもない駄作で、ファンは二度と海外にゴジラの上映権を売るなと猛抗議をするほどだった。俺も期待感が高まったのはオープニングまでで、あとは何も記憶に残っていない。
もしあの時、このクローバーフィールドがハリウッド版として公開されていたならば、恐らく日本からガメラやモスラの怪獣映画や特撮モノまで多種多様な作品がもっとハリウッド版としてながれていた可能性は高い。それほどにこの映画は怪獣・特撮・SF好きには刺激的でファンには受け入れられる要素が多いと感じた。この映画を、どこかで見たことのある設定だとか云々で語るのはナンセンスだ。ドップリとこの世界観に浸かる事をオススメしたい。
手持ちカメラ映画として賑わせたのはかつて「ブレアウィッチ・プロジェクト」があったが、自主映画の枠では決して撮れないのが今回の作品。本当にどうやって撮影しているのか分からないシーンが結構あり楽しめる。それこそ劇場の大スクリーンと大音響で体感しないと意味がない、もしかしたら家で観ると全く面白くないかもしれない。できるかぎり視界一杯にスクリーンが拡がるまで前で見て欲しい。
<GOOD POINT>
1.市街戦の迫力ある映像を堪能してほしい。殆ど内容に触れたくないので割愛するが、中盤以降に市街戦が出て来る。これはかなり迫力があってウキウキしてしまった。実際の現場もこういう事になるんだろうな・・・と、しかしハリウッドのCG技術はどこまで進化するのだろうか。
2.プロが撮る素人映像の技術は素晴らしい。手持ちカメラという設定だが、勿論プロのカメラマンが素人っぽく写るように撮影しているのである。だから一見、この映像は雑に見えるように仕組まれているにも関わらず非常に計算されて撮られているのである。「雑」も計算の一つである。是非、メイキングを見てみたいと感じた。
3.意外にも構成は良く練られている。またしても内容に触れるので割愛するが、パニック一辺倒で押している様に見えて常に展開が読めないように一工夫してある。最後の20分くらいは終わりそうで終わらないという展開で唸る所も多かった。
<BAD POINT>
1.主人公が愛する人を助けるためとはいえここまでするか?ということだが、先述したとおり、この作品に物語をどうこう突く事はナンセンスであるため、途中から気にしない事にした。
(IE5)
クローバーフィールド/HAKAISHA - goo 映画
これこそがハリウッド版のゴジラだ!
ちょうど10年前にゴジラがハリウッドでリメイク、「GODZILLA」として逆輸入された。アメリカの宣伝効果もあり「日本が生んだ怪獣映画がどのようにパワーアップして帰ってくるのか」というファンの期待感は相当に高まっていたかと思う。しかしいざ蓋を開けてみるととんでもない駄作で、ファンは二度と海外にゴジラの上映権を売るなと猛抗議をするほどだった。俺も期待感が高まったのはオープニングまでで、あとは何も記憶に残っていない。
もしあの時、このクローバーフィールドがハリウッド版として公開されていたならば、恐らく日本からガメラやモスラの怪獣映画や特撮モノまで多種多様な作品がもっとハリウッド版としてながれていた可能性は高い。それほどにこの映画は怪獣・特撮・SF好きには刺激的でファンには受け入れられる要素が多いと感じた。この映画を、どこかで見たことのある設定だとか云々で語るのはナンセンスだ。ドップリとこの世界観に浸かる事をオススメしたい。
手持ちカメラ映画として賑わせたのはかつて「ブレアウィッチ・プロジェクト」があったが、自主映画の枠では決して撮れないのが今回の作品。本当にどうやって撮影しているのか分からないシーンが結構あり楽しめる。それこそ劇場の大スクリーンと大音響で体感しないと意味がない、もしかしたら家で観ると全く面白くないかもしれない。できるかぎり視界一杯にスクリーンが拡がるまで前で見て欲しい。
<GOOD POINT>
1.市街戦の迫力ある映像を堪能してほしい。殆ど内容に触れたくないので割愛するが、中盤以降に市街戦が出て来る。これはかなり迫力があってウキウキしてしまった。実際の現場もこういう事になるんだろうな・・・と、しかしハリウッドのCG技術はどこまで進化するのだろうか。
2.プロが撮る素人映像の技術は素晴らしい。手持ちカメラという設定だが、勿論プロのカメラマンが素人っぽく写るように撮影しているのである。だから一見、この映像は雑に見えるように仕組まれているにも関わらず非常に計算されて撮られているのである。「雑」も計算の一つである。是非、メイキングを見てみたいと感じた。
3.意外にも構成は良く練られている。またしても内容に触れるので割愛するが、パニック一辺倒で押している様に見えて常に展開が読めないように一工夫してある。最後の20分くらいは終わりそうで終わらないという展開で唸る所も多かった。
<BAD POINT>
1.主人公が愛する人を助けるためとはいえここまでするか?ということだが、先述したとおり、この作品に物語をどうこう突く事はナンセンスであるため、途中から気にしない事にした。
(IE5)
クローバーフィールド/HAKAISHA - goo 映画
36点
時代に乗りきれていない反戦映画
新藤兼人が95歳でまだ頑張っているが、商業映画を撮る監督としては山田洋次が最年長であろう。「男はつらいよ」シリーズを続けながらも合間に「家族」「幸福の黄色いハンカチ」「遙かなる山の呼び声」「息子」などの名作の数々、最近では時代劇三部作「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」が完結しまだまだ創作意欲は衰える所を知らない。山田作品は総じて人間ドラマである。スクリーンの中に喜怒哀楽を出来るだけ詰め込もうとした演出は流石であると言えるだろう。
今作は太平洋戦争中のある家族を描いているが、セット・衣装・小道具などに一つの手抜きも無く役者もベテランが要所を固めて隙が無い。特に笑福亭鶴瓶が演じる奈良のオッサンは全体的に重いトーンの中、一服の清涼剤の役目を担っており、なかなかの名演であった。しかしながら全体を通した印象はとても説教くささが残った。常に観客を意識する山田作品にしては珍しく自己主張が強く押しつけがましい。まるで戦後まもない頃に作られた映画を観ているようだった。
観客は殆どが60代以上の年配の方々で、そう言う意味では観客は久しぶりに当時を振り返るには丁度良い映画だろう。しかし若い世代にはテンポも物語の展開も今ひとつ長いと感じる。時代が戦後なら絶賛されると思われる作品だが、戦争を知らない若い世代にこそ見せるべき映画としてはテイストが違うと感じた。
<GOOD POINT>
1.鶴瓶の演技も良かったが、姉妹の姉役・志田未来もとても上手かった。今のご時世でも戦中の子供を演じれる人間はいるんだと感心した、勿論、山田演出があっての事だが。俺は未見だがドラマ「14才の母」の演技も絶賛されていた。天才子役という言葉は好きではないが、演技力はずば抜けて高い。
<BAD POINT>
1.吉永小百合の役に無理があるような・・・。こうかくと年齢的な事だけと捉えられるのだが、浅野忠信が恋い焦がれるにしては、幾らサユリストだったとしても無理がある。せめて浅野よりもう10歳老けて見える役者を起用して欲しかった。
2.ラストで現代のシーンに戻ってくるが、これが果たしているのだろうか?何か取って付けたようなセリフと芝居がとても浮いているように感じたのだが。やはり最後まで山田洋次の自己主張が気になった。
(IE5)
母べえ - goo 映画
時代に乗りきれていない反戦映画
新藤兼人が95歳でまだ頑張っているが、商業映画を撮る監督としては山田洋次が最年長であろう。「男はつらいよ」シリーズを続けながらも合間に「家族」「幸福の黄色いハンカチ」「遙かなる山の呼び声」「息子」などの名作の数々、最近では時代劇三部作「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」が完結しまだまだ創作意欲は衰える所を知らない。山田作品は総じて人間ドラマである。スクリーンの中に喜怒哀楽を出来るだけ詰め込もうとした演出は流石であると言えるだろう。
今作は太平洋戦争中のある家族を描いているが、セット・衣装・小道具などに一つの手抜きも無く役者もベテランが要所を固めて隙が無い。特に笑福亭鶴瓶が演じる奈良のオッサンは全体的に重いトーンの中、一服の清涼剤の役目を担っており、なかなかの名演であった。しかしながら全体を通した印象はとても説教くささが残った。常に観客を意識する山田作品にしては珍しく自己主張が強く押しつけがましい。まるで戦後まもない頃に作られた映画を観ているようだった。
観客は殆どが60代以上の年配の方々で、そう言う意味では観客は久しぶりに当時を振り返るには丁度良い映画だろう。しかし若い世代にはテンポも物語の展開も今ひとつ長いと感じる。時代が戦後なら絶賛されると思われる作品だが、戦争を知らない若い世代にこそ見せるべき映画としてはテイストが違うと感じた。
<GOOD POINT>
1.鶴瓶の演技も良かったが、姉妹の姉役・志田未来もとても上手かった。今のご時世でも戦中の子供を演じれる人間はいるんだと感心した、勿論、山田演出があっての事だが。俺は未見だがドラマ「14才の母」の演技も絶賛されていた。天才子役という言葉は好きではないが、演技力はずば抜けて高い。
<BAD POINT>
1.吉永小百合の役に無理があるような・・・。こうかくと年齢的な事だけと捉えられるのだが、浅野忠信が恋い焦がれるにしては、幾らサユリストだったとしても無理がある。せめて浅野よりもう10歳老けて見える役者を起用して欲しかった。
2.ラストで現代のシーンに戻ってくるが、これが果たしているのだろうか?何か取って付けたようなセリフと芝居がとても浮いているように感じたのだが。やはり最後まで山田洋次の自己主張が気になった。
(IE5)
母べえ - goo 映画
28点
ティム・バートンよ、おごりが見えたぞ!
ティム・バートンの映画は個人的に当たり外れの落差が激しい監督である。評判の高かった「シザーハンズ」や「チャーリーとチョコレート工場」は好きだが「スリーピー・ホロウ」は全く駄目であった、あの首無し騎士に驚喜するファンは多いのだが・・・。ティム・バートンの世界観は突き抜けている、もし一人だけ、頭のイメージが覗けるならティム・バートンと指名したいほどだ。画もしっかりしているし、構成力も相当に高い。それだけの能力を備えていると知っているだけに、好き嫌いを除いても、この映画は完全なマスターベーション作品と呼べるのでは無いのだろうか?
ジョニー・デップを使っていれば何をしても良いと思ったか、前作「チャーリーとチョコレート工場」の成功の見返りに何をしても良いと思ったか。とにかく、 この作品にはティム・バートンのおごりが見えるのである。どれだけ巨匠になっても常に観客に見せるという意識は失わないで貰いたい。
ちなみに上映後に後ろのおばちゃん連中が気持ち悪そうにハンカチを口に充てながら「チャーリーと全然違う・・・」という言葉をもごもごと発していたのが痛々しかった。
<GOOD POINT>
1.やはり独特な世界観を見事に映画に表現できている。原作もので演劇でも激賞された物語らしいのだが、フリート街というなんとも言えない不気味な街を作りあげている手腕は流石である。
<BAD POINT>
1.ティム・バートンはとにかくカミソリで喉をかっ切るシーンを遣りたかったと思う。一般市民が何人も切られて行き、血も音楽の乗せて飛んでいく。でもこれだけだったらスウィーニー・トッド(ジョニー・デップ)は復讐に燃える男というよりもただの殺人鬼にしか見えない。完全なスプラッター映画である。例えジョニーが大好きな人間が見たとしても感情移入は難しいだろう。
2.ミュージカル映画仕立てになっているが、音楽部分が多すぎる!殆ど音楽に乗せてセリフが交わされていくので物語りとして進んでいかないのである。おそらくセリフ:ミュージカルセリフ=3:7ぐらいだろうが、せめて6:4には収めて欲しいところ。音楽自体はとても良いのに「また歌かよ」と最後は辛かった。これも演劇から受け継いでいるからだろうが、ここを料理していないのは手抜きである。
3.主人公がピンチに陥らない。全部、敵の方から罠(理髪店のソファ)に掛かりにやってくるのである。こんな簡単な復讐劇はないだろう。のどを切り裂くにしても敵の陣地にどうにか入り込んで、色んな困難を乗り越えた上で実行しないと・・・復讐が果たせた時に全くカタルシスを得る事はできなかった。
結構辛辣な事ばかり書いたがティム作品には期待しているのである、次作に期待したい。
(IE5)
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 - goo 映画
ティム・バートンよ、おごりが見えたぞ!
ティム・バートンの映画は個人的に当たり外れの落差が激しい監督である。評判の高かった「シザーハンズ」や「チャーリーとチョコレート工場」は好きだが「スリーピー・ホロウ」は全く駄目であった、あの首無し騎士に驚喜するファンは多いのだが・・・。ティム・バートンの世界観は突き抜けている、もし一人だけ、頭のイメージが覗けるならティム・バートンと指名したいほどだ。画もしっかりしているし、構成力も相当に高い。それだけの能力を備えていると知っているだけに、好き嫌いを除いても、この映画は完全なマスターベーション作品と呼べるのでは無いのだろうか?
ジョニー・デップを使っていれば何をしても良いと思ったか、前作「チャーリーとチョコレート工場」の成功の見返りに何をしても良いと思ったか。とにかく、 この作品にはティム・バートンのおごりが見えるのである。どれだけ巨匠になっても常に観客に見せるという意識は失わないで貰いたい。
ちなみに上映後に後ろのおばちゃん連中が気持ち悪そうにハンカチを口に充てながら「チャーリーと全然違う・・・」という言葉をもごもごと発していたのが痛々しかった。
<GOOD POINT>
1.やはり独特な世界観を見事に映画に表現できている。原作もので演劇でも激賞された物語らしいのだが、フリート街というなんとも言えない不気味な街を作りあげている手腕は流石である。
<BAD POINT>
1.ティム・バートンはとにかくカミソリで喉をかっ切るシーンを遣りたかったと思う。一般市民が何人も切られて行き、血も音楽の乗せて飛んでいく。でもこれだけだったらスウィーニー・トッド(ジョニー・デップ)は復讐に燃える男というよりもただの殺人鬼にしか見えない。完全なスプラッター映画である。例えジョニーが大好きな人間が見たとしても感情移入は難しいだろう。
2.ミュージカル映画仕立てになっているが、音楽部分が多すぎる!殆ど音楽に乗せてセリフが交わされていくので物語りとして進んでいかないのである。おそらくセリフ:ミュージカルセリフ=3:7ぐらいだろうが、せめて6:4には収めて欲しいところ。音楽自体はとても良いのに「また歌かよ」と最後は辛かった。これも演劇から受け継いでいるからだろうが、ここを料理していないのは手抜きである。
3.主人公がピンチに陥らない。全部、敵の方から罠(理髪店のソファ)に掛かりにやってくるのである。こんな簡単な復讐劇はないだろう。のどを切り裂くにしても敵の陣地にどうにか入り込んで、色んな困難を乗り越えた上で実行しないと・・・復讐が果たせた時に全くカタルシスを得る事はできなかった。
結構辛辣な事ばかり書いたがティム作品には期待しているのである、次作に期待したい。
(IE5)
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 - goo 映画