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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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gadara.jpgごちゃ混ぜ大人のテーマパーク

学者一家が日本・アフリカを舞台に悪役の呪術師と戦う。これは、どちらかというとSFに近い内容で、日本推理作家協会賞を受賞しているので紛らわしいが、ミステリーというより超常小説だ。これで主人公たちが少年少女なら完全にジュブナイルだが、そこが中島らも。主人公はアル中の中年教授、泥臭い人間描写でかなり読ませる。

新興宗教やアフリカ、呪術やテレビ、アルコール・ドラッグから格闘技まで、恐らく作者が面白いと思った要素が全て叩き込まれている。たくさんのおもちゃを集めて作った遊園地のようでもある。面白がることにかけて、才能のあった中島らもである。面白くないはずはない。ただ、このテーマパークは人間の闇も多く含んでいる。コミカルでありながらどこか居心地の悪い違和感がつきまとう。描写もグロテスクだ。

率直言ってやはりちょっと下品な気がする。「おいしい」小説ではあるが、気取った所がどこにもない。それだけに芯に来る感動というものはない。読んでいる間はずっと「面白がれる」小説であることは間違いないが、小説的にはちょっと構成が歪だったり、キャラクターが変人過ぎる気もする。その辺も含めて「中島らも」だと思って読むことをお薦めする。

ご存知の通り著者は泥酔の上、階段から転落したことが原因で亡くなられている。本書にもドラッグ等を肯定的に捉える描写があったり、そもそも主人公がアルコール中毒だったりする。一方で、プロレスなどらも氏が好きだった娯楽も設定として生きていて、何だか少し哀しい感じもする。内容とは関係ないが、らも氏は、生きることに常に苦しんでいたのだろうか。

とにかく、かたい事は言わずに気軽に楽しむ、そして、ちょっと作者に興味が湧く、そんな小説である。

評価点75点
(KIURA)

今週のJ-POP:Superflyのアルバムが予想以上の出来だった。俺の感覚的には民生とドリカムが混ざっているような気がしたが、全然違うかもしれない。聴きやすくて、歌も上手い。洋楽っぽいがデリコ程でもなく、単純に楽しめる。この夏、一押しだ。
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jyuusann.jpgスリリングな良作娯楽作品
無実の罪で死刑が迫っている受刑者を救う為に、あることから殺人に及んでしまった青年と刑務官が奔走する。事件の真相を探るスリリングな展開に、日本の死刑制度や受刑者たちの苦悩が織り込まれ重厚なドラマが展開する。きっちり娯楽作品でありながら、テーマ性もあり、かなり読ませる一冊だ。

新鮮な設定
映画にもなっているので、少し前の話題作だと思うが、全然内容は知らなかった。しかし、これは予備知識なく読んで本当に良かったと思う。何よりお話が面白い。3ヶ月の期限付きの犯人探しという要素に、元殺人犯と刑務官という斬新なコンビの設定が秀逸に感じた。同じ内容でもいきなり刑事が出てくれば興ざめだが、その微妙な設定が興味を引く。

死刑制度について
日本の死刑制度は、ちょっと前に現法相の「死神」事件で取り上げられていたので、より興味深く読めた。「人が人を裁く」という重いテーマにも踏み込んでおり、しかも、その場面が単なる説明ではなく、登場人物の過去として実にリアルに書かれている。ここだけでも十分面白い。他にも資料がきっちり小説として昇華されており、興がそがれることもない。その辺も上手いなあと思う。

娯楽作品として文句なし
知らない世界を覗く快感、興味を引っ張る主人公達の「過去」、意外な展開を見せる捜査状況とほとんどだれずに最後まで引っ張ってくれる。文章の硬度もこの内容に相応しいものだ。終盤の展開が力技過ぎる気もするが、読んでいる間は気にならない。ラストは賛否両論あるかもしれないが、自分は満足できた。不満があるとすれば色んな「強引さ」かもしれないが、娯楽作品としては文句なし。

本ブログ的に一押し
総じて、パズルのような推理小説でもなく、バリバリの社会派作品でもなく、下品なおふざけも無く、才能が鼻につくでもない稀に見る傑作娯楽作品だ。久しぶりに内容にも読後感にも満足できる一冊だった。こういう本に次々出合えれば本当に幸せだ。これまでのホラー・サスペンス特集では一押し作品としたい。

評価点:90点 スリルとサスペンスと寂寥感
解せないシーンもあるにはあるが(終盤の種明かし部分や「偶然」の多発)整合性よりも面白さを取った結果だと見た。映画の評価はイマイチだが、何となく分かる気がする。

<IE5/KU> 10点以下 30点以下 80点以上 90点以上 

<  /78>012 シベリア追跡(椎名誠/集英社文庫)
<  /52>011 腐蝕(竹本 健治/角川ホラー文庫)

<  /64>010 チーム・バチスタの栄光(海堂尊/宝島社)
<  /85>009 野火(大岡昇平/新潮文庫) 
<  /55>008 メドゥサ、鏡をごらん(井上 夢人/(講談社文庫)
<  /60>007 ハサミ男(殊能 将之/講談社文庫)
<  /35
>006 プルトニウムと半月(沙藤 一樹/角川ホラー文庫)
<  /55>005 狐火の家(貴志祐介/角川書店)
<  /85>004 新世界より(上)(下)(貴志祐介/講談社)
  /  >003 真剣師 小池重明 (団鬼六/幻冬舎アウトロー文庫)   
<  /75>002 あかんべえ(上)(下)(宮部みゆき/新潮文庫)
  /  >001 鴨川ホルモー(万城目学/産業編集センター)
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