忍者ブログ
乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

sibe.jpg20年前のロシアへタイムスリップ!
江戸中期にロシアに漂流し、苦難の末に帰国した大黒屋光太夫の足跡を、椎名誠が1986年にたどった旅行記である。これは当時、テレビのドキュメンタリーの企画として製作されたらしく、有名な「あやしい探検隊」系のお気軽旅行話ではなく、かなり本格的なドキュメンタリーとなっている。22年前経った今も、ちょっとストロングな旅行記として楽しめる。

シーナリスト?
このブログでは、椎名誠の作品は初めて紹介するのだが、実は数えてみたら家に椎名誠作品が80冊以上あった。これは栗本薫の約170冊(グインサーガ140冊、魔界水滸伝20冊、その他10冊ほど)に継いで多い。まあ、多ければいいというものではないのだが、これだけ読んでいるということは、立派なシーナリスト(?)を名乗れると思う。椎名作品は、エッセイ、旅行記、小説(自伝的小説とSF・超常小説)と大別できるのだが、この作品は旅行記、それもかなり気合の入った部類である。

軽妙な文章
椎名作品の魅力は、やはりかつて「昭和軽薄体」と称された独特の文体であろう。椎名氏の素朴な人柄と「実感」が伝わってくる。このところ、椎名氏風に言えば「わしホンマに勝負したるけんね」風のギラギラしたやる気満々のサスペンスやミステリー、ホラーばかり読んでいたのでちょうど良い軽さといった感じた。しかも、ソ連と呼ばれた時代のロシアはミステリアスで非常に面白い。

3つの構成
冒頭はアリューシャン列島のアムトチカ島から始まる。ここは、歴史上最も大きな核実験が行われた島で、ガイガーカウンターを持ちながらテント設営の場所を探しているのがかなり凄まじい。また、風が激しく木が一本もないのである。この本は、この「アムトチカ編」、零下60度になる冬の「シベリア編」、そして夏の「シベリア再訪編」という構成になっている。どれもなかなか興味深いが、やはり零下60度の世界を旅するシベリア編の自然と、摩訶不思議な社会情勢の描写が面白い。

地球温暖化
それにしても気になるのは、その後ソ連はどうなったのであろうか、ということだ。例えば、当時はシャワーも満足に出ないし、レストランも注文から料理が出てくるまで1時間以上かかったようだ。今もそうなのだろうか。そして零下60度の世界は、今もきっちり60度なのだろうか。前に永久凍土が溶けているという話を聞いたことがあるので、多分、大きく様変わりしているであろう。社会情勢もずっとよくなったはずだ。国際情勢にきわめて疎い俺に何か今のロシアを知るお勧めの本があれば教えて欲しいところである。

評価点:74点
ちなみに、「ロシアにおけるニタリノフの便座について」という本にもこのロシア編の記事が出ている。椎名氏の本は数が多いのでエピソードがたぶっている事もあるが、逆に関連が分かって面白い面もある。あと、恐ろしいことにYouTubeでこのシベリアのドキュメンタリーが観られる。えらい時代になったなぁ、と改めて思った。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
書きすぎ
椎名&栗本で250冊って・・・内容よりも大量に消費された紙の量が気になる。以前より益々テレビから姿を消してしまった感のある椎名誠だが、身も心も大自然に行ってしまわれたのだろう。本も殆ど読んだことがないので一度ゆっくり読んでみたい。グインサーガはKIURA氏に任せます。
IE5 2008/07/10(Thu)16:52:59 編集
椎名誠と栗本薫
椎名誠はもう64歳なので、そういう意味ではもうシベリア横断とかは無理かもしれない。著作は大量にあるが、とりあえずSF三部作と呼ばれる「武装島田倉庫」「水域」「アド・バード」はお薦め。エッセイ系では「わしらはあやしい探検隊」、自伝系では「黄金時代」「銀座のカラス」「麦の道」などが魅力的。
栗本薫は確かに「書いた原稿を読み直さない」とまで言われ、グインサーガは「毎月」刊行された時期もある。全く人には薦められない。ただ、近年癌にかかってグインサーガが完結するかどうかが心配になってきた。
Kiura 2008/07/10(Thu)18:19:44 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
TEAM OKKOTO
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
最新コメント
[08/03 きうら]
[07/24 IE5]
[07/19 きうら]
[07/04 IE5]
[06/30 きうら]
忍者ブログ [PR]