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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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bati.jpg良く出来た2時間ドラマ
~'08ホラーサスペンス特集(7)
心臓の特殊な手術であるバチスタ手術、成功率が低いこの手術で奇跡的に成功を続けているチームがあった。東城大学医学部付属病院の桐生恭一のチーム、通称「チーム・バチスタ」である。ところが、立て続けに手術に失敗し、患者が死んだ。果たしてこれは事故なのか、それとも殺人なのか。この謎に、内部調査を命じられた同じ大学の医師・田口公平が挑む。医療をテーマにしたベストセラー。その実力はいかに。

興味を引かれるドラマ
この作品は、本質的にミステリーではない。犯人探しの要素はあるが、それは主なテーマではないと感じた。この作品は、本質的に医療をテーマにした軽妙な会話劇だ。登場人物のキャラクターを立たせることに注意が払われており、それは会話や主人公のモノローグで進行する。細かく章を区切ることも忘れない。途中まで読んで、似た印象のものを思い出した。これは2時間ドラマ的なのだ。

決して悪くはない
映画に2時間ドラマといえば、ほとんど悪口だが、小説に対しては必ずしもそうではない。2時間分気軽に飽きずに楽しめ、ちょっとした余韻もある。この作品がこれだけ売れているということは、この「軽さ」に対してはかなりのニーズがあるということだろう。キャラクターも立ってはいるが、どことなく漫画的、小説的に言えばあと少しでジュブナイル小説というところだろう。酷評できる要素はあるが、全体のバランスはよい。

オチが納得できない
個人的には、犯人が納得できない。というより、謎解きが謎解きになっていない。ミステリーは、読者が予想していた展開を超えたトリックや謎が明かされた時にこそカタルシスが生じる。ところが、この小説は、専門的な医療がテーマなので、予想しようがないのである。「不可能な状態(密室)で何かが行われているということはわかるが、その不可能な状態が本当に不可能なのか確かめようがない」のである。主人公が一応、丁寧に調査していくが、読者を作者目線の「常識」に高めるほどではない。

印象には残る
後半登場するホームズ役の白鳥というキャラクターは非常に印象に残る。破壊的なキャラクターで、京極夏彦の京極堂シリーズをご存知の方なら「榎木津」と言えばわかるだろうか。ただし、快刀乱麻を断つ、という存在なのだがエキセントリックすぎて感情移入できなかった。前半の丁寧な流れの方が好感が持てた。このキャラクターがいないと凡作になっていた可能性もあるが、これはやりすぎだろうと感じた。総合すると、気軽に楽しめる医療ドラマという意味では秀逸、好きか嫌いかといえば「それほど」、人に薦めるなら「軽い読書を求めている方に」という感じである。

評価点:64点 軽妙な医療会話劇
以前に「四日間の奇跡」で騙されてからは、ミステリーのランキングは参考程度にしか信用しなくなったが、この作品が大賞というのもいかにも信用できない。いっそ「このミステリーは読みやすい」くらいにした方がいいのではないか。
ちなみに、ホラー要素はもちろん0。サスペンスとしてはまずまず。
(Kiura)

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この軽さが
読みやすさ=読者が増えるという定義は当てはまると俺も思う。もちろん面白い事が前提なのだが・・・。俺もこの本は面白く読んだ、まぁ専門用語連発を興味を上手く持続させながら勧めているのは上手いと思った。白鳥シリーズとしてあと3作品ぐらい出ているがどうするかなぁ。
IE5 2008/07/04(Fri)07:30:22 編集
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