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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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konjiki.jpg壮大な振られ話

ユニコーンの有名な「大迷惑」という曲で、「俺は貫一、君はお宮~♪」と歌われている二人が主人公の小説。個人的には、昔、コント55号がパロってたのをうっすらと覚えている。

と、いう非常に限られた予備知識のもと、この長編小説を読んでみた。

簡単に言うと、裕福な生活に目が眩んだヒロイン(お宮)に振られた貫一は、絶望のあまり養父(お宮の実父)の元から失踪し、金貸(当時最も忌むべき職業として)に成り下がって、最後まで苦悩し続ける、という「だけ」のものである。

正直、古典調の情景描写は非常に読みにくいし、二人のやり取りも現代では「ありえない」レベルの純情物語で、「男女七歳にして同衾せず」などの概念が生きていた時代の物語である。貫一の絶望振りは分からないでもないが、これは当時の常識から考えても暴走しすぎではないかと思うのだが、どうだろう。

ただ、有名な熱海の足蹴シーン、貫一が旧友から金を取り立てる場面、しつこく付きまとう貫一に岡惚れした金貸の人妻の恨み言など、スリリングなやり取りのシーンもあり、所々は非常に吸引力があると思う。

あと、金色夜叉は実は、「前編」「 中編」「 後編」 「続金色夜叉」・「 続続金色夜叉」・「 新続金色夜叉」という構成で、最後のほうの何だかわからない「新続」などの名称は、100年前の小説ということを考えると突っ込みどころであろう。

最後の最後、予備知識のない俺を衝撃の事実が襲ったことも書いておかねばなるまい。

金 色 夜 叉 は 未 完 。

「中~途半端やなぁ~(By
ちゃらんぽらん)」それも古いか。
(KIURA)
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tamamo.jpg面白い小説はまだまだある

「半七捕物帳」位しか知らなかった岡本綺堂だが、題名に引かれてこの「玉藻の前」を読んでみた。玉藻の前といえば、妖怪ファンにはお馴染みの九尾の狐、そして那須の殺生石。文学全集にも名を連ねる岡本綺堂がそんな「キワモノ」を題材に! 結構ワクワクして読みました。

出だしは地味な展開だったが、これが実に面白い。古文調だが、読みやすく、すぐに物語に引き込まれる。しかし、基本的な物語構造は悲恋である。例えは俗だが、立場の違う二人が惹かれあい、やがて悲劇を迎えるロミオ&ジュリエット方式だ。こんなことを言うと「甲賀忍法帳」(今読んでいる)みたいだが。

物語は非常に不安定で、現代的な予定調和を見ないところが面白い。地味な展開が続くかと思うと、突然、妖怪が跋扈する幻想的な描写が入る。主人公が破滅しそうになると救われ、救われそうになると破滅する。純愛と見せかけ、いきなり主人公がとある姫に惚れたりする。大団円に落ち着くと見えて、まだ何転かする。率直に言って、小説が上手い。いや、無名の書痴が偉大な先達に向かって失礼だ。

九尾の狐、陰陽師、術比べなど、ライトノベル的要素を内包しながらも、これほど奥の深いエンターテイメントに仕上げるとは、岡本綺堂恐るべし。結構、小説は読んだつもりだったが、まだまだ世界は広い。怪談集も面白そうなので買ってしまった。妖怪好き、奇譚好きには是非オススメ。ちなみに青空文庫でも読める(
玉藻の前)ので、ぜひどうぞ。
(KIURA)

guin126.jpg合掌、そして

2009年5月26日にグイン・サーガの著者、栗本薫氏が永眠された。高校時代からそのグインサーガを読み始めて早17年になろうとしている。現在の最新刊は126巻、ご存知の通り、未完で終わってしまったのである。

連載は1979年にスタートしているので、リアルタイムに読み始めた人は既に30年……そこまでのお付き合いはないのだが、17年間買い続けているシリーズというのもこれだけだったので、思うところはかなりある。また、有名な作家で唯一直接お会いしてサインをもらった人でもある。

正直に言って、最近のグイン・サーガは惰性の産物であったと思う。もし、何の予備知識もなく最新刊を読んだ読者からすれば「何だこれ?」というレベルである。文章は(初期と比べ)砕けに砕け、物語は遅々として進まず、登場人物は愚痴ばかりこぼしている。はっとするシーンもごく稀にあるが、その程度は100グラムの砂の中に1グラムだけ砂金が混じっている感覚だ。いや、1000グラムかもしれない。

もちろん、最初からそうだった訳ではない。最初の17巻は、感動必至の堂々たるファンタジーである。その濃密な光と闇の世界に心奪われたものだった。その後、50巻くらいまでは楽しめる展開もあったし、「まあ、その内滅茶苦茶面白くなるぞ」という期待で読み進めた。そして、50巻を過ぎ、100巻を過ぎ、諦めで塗りつぶされた。作者の自画自賛、同性愛的展開、脇にそれすぎるストーリー、砕けた文章……あの輝きが戻ってくることはなかった。

では、なぜ、読み続けたのだろう。それは多分、そこに、変わらない何かがあったからだ。いつ読んでも、そこでは常に物語が流れている。苦しい時も、楽しい時も、常にそこにはひとつの世界があった。例えそれがくだらなく思えても、終わらない世界で、時折古い友達と話していたような感じだろうか。その場所が突然消えてしまった。当面は無くなることがないと思っていた僕たち全ての憩いの場はもう無い。

マスコミによると130巻途中で絶筆ということなので、後3巻は必ず出るはずである。話としては漸く、漸く本筋が面白くなる「気配」が、「何となく」漂ってきたところだったのだ。しかし、熱心な読者なら、作者が最後まで物語のプロットを考えていたことも知っている。海外では、別人が続きを書くこともあるのだ。
そこで、愛憎入り混じった気持ちで本音を言えばこうなる。

「どうせ、最近はグダグダだったんだから、とにかく、誰でもいいから最後まで書いてくれ!」
ある種のグイン・サーガ読者(同志)には、多分分かってもらえると思う。

何はともあれ、心からご冥福をお祈りいたしします。
(KIURA)

追記:合計24巻出ている「魔界水滸伝」(全部読んでる)も、もちろん投げっぱなしです。
nananana.jpg飛行機や列車にテーマを取った交通ミステリー短編集。何とは無しに「社会派」ミステリーを探していたら、名も知らぬ読者が薦めていたので、読んでみた。元来、長編小説好きなので短編を読むととにかく忙しい気がする。「起承」と「転結」がそれぞれ連結されていて、感情移入する暇がない。「社会派」ということで謎解きには社会情勢も絡むが30年位も前の話である。やはり古いという感じは否めない。女性に対する描写や名前の付け方等、著者の感性と微妙に相容れないところもあり、余り楽しい読書とはならなかった。ただ、「オリエント急行殺人事件」のパロディという最後の短編「ローマ急行殺人事件」は、アイロニーが効いて面白かった。これにこりず「社会派」はもう少し探求してみたい。(40点)
(KIURA)
18796570.jpg奇想、天を動かす(光文社文庫/ 島田荘司 )
年老いたピエロ、列車事故、死体の消失、老人の突発的殺人など、不可解な謎を追っていくミステリー。偶然、松本清張の後に読んだのだが、著者が社会派ミステリーを宣言していて驚いた。確かに、社会問題は扱われているが、時代の違いか文化の違いか、あまりリアリティを感じ取れない。決して描写がいい加減という訳ではないのだが、時代感覚がずれていて、「砂の器」と同じような微妙な違和感を覚える。社会派ということで、俺の大嫌いな「本格」にありがちな「トリックを成立させるために考えた殺人現場」という印象は薄いが、社会問題と融合しているとは言いがたい。水準レベルは楽しめるとは思う。<55点>



book.jpg本の雑誌血風録(朝日文庫/椎名誠)
椎名誠が創刊に深く関わり、今も刊行されている書評誌「本の雑誌」成立の過程を描いた物語。ドキュメンタリーとエッセイの混じったような不思議な構成になっており、「椎名誠が昔の様子を思い出して書いた」というのが正確な表現なのかも知れない。「本の雑誌」成立の面白さもあるが、椎名誠がサラリーマンからいかにはみ出していったかという様子の方が面白い。いかにも適当に生きていたようでもあり、何かの情熱に突き動かされていたようでもあり、スラスラ読める。ただし、物語にはっきりとした起承転結はなく、突然終わる。実は「哀愁の町に霧が降るのだ」から続く椎名の自伝的小説の一部に属する小説なのだ。この話は「新宿熱風どかどか団」に続く。先に「哀愁~」などを読んだ方がいいだろう。<55点>


neppuu.jpg新宿熱風どかどか団(朝日文庫/椎名誠)
前述の通り、本の雑誌血風録に続く「本の雑誌」に関わる椎名誠の物語が描かれている。血風録よりは、小説に近くなっている気がするので読みやすくなっている。「本の雑誌」が波に乗り始め、そして黒字倒産の危機に陥るあたりまでが描かれているが、前作同様明確な起承転結はない。これは、椎名誠という人物をめぐる100冊以上のエッセイや私小説やSF等の一端に位置するもので、椎名誠を構成する物語のごく限られた一部分を埋めるものである。要するにファン以外はあまり面白くないのではないかと思う。文章は読みやすいので、肩の力を抜いて楽しむ読書には向いている。<50点>


issyunn.jpg一瞬の夏(上)(下)(新潮文庫/沢木耕太郎)
再起を目指すボクサーと、その周囲に集うプロモーター、トレーナー、恋人、ライバル等の姿を描くドキュメンタリー。作者の役割はプロモーターで、その視点から物語が書かれているので、私小説的でもある。何かを成し遂げようとして、中々それが出来ない男たちのしぶとい戦いの物語だ。基本はドキュメンタリーで先が読めないが、ひとつのテーマがそれを貫いているので散漫な印象はない。硬質な文章だが、書き手は「深夜特急」の沢木耕太郎である。この題材で面白くないはずはない。特に20代後半から30代の人間が感じる「ある種の人生に対する飢餓感」が克明に描かれている。先が読めず、とにかく面白いのでオススメだ。ちなみに「クレイになれなかった男」(「敗れざる者たち」所収)の続編的な位置づけなので、先にこちらを読むと冒頭の台詞の意味がよく分かる。
<80点>


c7cc032f.jpgひとつ目女(椎名誠/文藝春秋)
椎名誠のSFはいわゆる三部作(アドバード・水域・武装島田倉庫)が金字塔とされているが、それ以降も同じテイストを持った作品は発表されている。これもその系譜につながる一つだ。武装島田倉庫の平行世界のようだが、微妙な相違点もある。「ひとつ目女」と来て、武装島田倉庫の最初のエピソードを思い出せる椎名SFファンであれば、十分楽しめる内容となっている。ただし一般的な冒険小説でもなく、娯楽小説でもない「奇妙な話」なので、万人向けでないのは明らか。物足りなさもある。「武装島田倉庫」のリアリティと虚実のしびれるような融合はもう二度と味わえないのか。この感想は椎名SF好きなら共有できるはず。<65点>

(KIURA)
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