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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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何でも無い日常がこんなにドラマチックに

面白い物語とはなんぞや?と問われれば、ハラハラドキドキさせてくれる物語が浮かぶのだが、そのジャンルは多岐に渡る所にストーリーを作る永遠の可能性と難しさがあると思っている。向田邦子はそんな面白い作品を書くことのできる作家の中で最も普通の一般家庭の生活を題材に描く作家ではなかろうか?普通の一般家庭の区分けが難しいのだが、まぁサザエさんみたいな一見オーソドックスな家族というのが一番分かりやすい。しかし、見た目はサザエさんでも中身は色々とあるというのが人間である。そこの描写と心のひだを上手くすくい取り、読者をドンドン引き込んでいくというのが向田邦子の最大の武器であると思われる。

とにかく騙されたと思って読んで欲しいのだが、本当に普通の人達しか出てこない・・・なのに、この面白さは何なんだ?と感じるのではなかろうか。普通の生活の中にもこれだけのドラマが潜んでいるんだという事を改めて教えてくれる。映画もドラマも見ていないが、チェックしてみたい。
(IE5)


<阿修羅のごとく=アシュラマン=キン肉マン・・・で、この映像に>


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518HYC5BB8L__SS500_.jpg地味な捜査に静かに共感する男のドラマ

俺は数ヶ月サイクルで本を読む、読まないがローテーションするのだが、2009年最初の波がやってきた。読まない月は月に5冊程度だが、読む月は新旧有名無名問わず20冊はいく(漫画も5冊くらい含む)。多読には程遠いが、読んだ以上は何か感想を残していきたいと思う。

さて、松本清張の「砂の器」である。実はこれが松本清張の読書一作目だ。俺の両親が若い時にはまったといっていたので、前から興味はあったが、なぜかこのタイミングである。

通読してみて強く評価したいのは、地味な捜査を地味に書き続ける部分だ。先の見えない仕事にかける男気、そしてそれを支える物静かな妻、清く正しく美しい日本の人情が描かれている。仕事を持っている人間は、何か熱いものを感じることが出来るはずだ。中々成果に結びつかない所がいい。

逆にがっかりしたのは、強引なトリック部分や犯人の設定のぎこちなさ。時代背景が違うといえばそれまでだが、今となっては不自然な設定が目立つ。ハンセン病を絡めた下りも、当時は衝撃的だったのかもしれないが、今となっては設定のための設定という気もする。随所に残酷な描写がさらっと書かれているのも違和感がある。具体的にいうと「妊婦を超音波で殺すというのは一歩間違うと失笑ものである(反転ネタバレ)」。捜査部分に粘り強い描写が多いだけに、トリック部分は惜しい。

俺はこの年(34)になって変わってきたが、エキセントリックな主人公やドラマティックな謎解きというよりも、主人公の「失敗してもめげない姿勢」「他人に評価されなくても自分を信じてやり続ける仕事」しかもそれを「特に人に自慢したりしない」描写を好むようになった。そういう意味で、この小説は読んで良かったと思う。パソコンも携帯もない時代の話だが、大筋では違和感は少ないと思う。もうひとつの代表作「点と線」もその内読んでみたいところだ。
(KIURA)

評価点:65点 今風のスバヤイ展開を期待するとダメ。じっくり読みたい。ラスト、自分の功績を譲る主人公の言葉が渋い。

sibe.jpg20年前のロシアへタイムスリップ!
江戸中期にロシアに漂流し、苦難の末に帰国した大黒屋光太夫の足跡を、椎名誠が1986年にたどった旅行記である。これは当時、テレビのドキュメンタリーの企画として製作されたらしく、有名な「あやしい探検隊」系のお気軽旅行話ではなく、かなり本格的なドキュメンタリーとなっている。22年前経った今も、ちょっとストロングな旅行記として楽しめる。

シーナリスト?
このブログでは、椎名誠の作品は初めて紹介するのだが、実は数えてみたら家に椎名誠作品が80冊以上あった。これは栗本薫の約170冊(グインサーガ140冊、魔界水滸伝20冊、その他10冊ほど)に継いで多い。まあ、多ければいいというものではないのだが、これだけ読んでいるということは、立派なシーナリスト(?)を名乗れると思う。椎名作品は、エッセイ、旅行記、小説(自伝的小説とSF・超常小説)と大別できるのだが、この作品は旅行記、それもかなり気合の入った部類である。

軽妙な文章
椎名作品の魅力は、やはりかつて「昭和軽薄体」と称された独特の文体であろう。椎名氏の素朴な人柄と「実感」が伝わってくる。このところ、椎名氏風に言えば「わしホンマに勝負したるけんね」風のギラギラしたやる気満々のサスペンスやミステリー、ホラーばかり読んでいたのでちょうど良い軽さといった感じた。しかも、ソ連と呼ばれた時代のロシアはミステリアスで非常に面白い。

3つの構成
冒頭はアリューシャン列島のアムトチカ島から始まる。ここは、歴史上最も大きな核実験が行われた島で、ガイガーカウンターを持ちながらテント設営の場所を探しているのがかなり凄まじい。また、風が激しく木が一本もないのである。この本は、この「アムトチカ編」、零下60度になる冬の「シベリア編」、そして夏の「シベリア再訪編」という構成になっている。どれもなかなか興味深いが、やはり零下60度の世界を旅するシベリア編の自然と、摩訶不思議な社会情勢の描写が面白い。

地球温暖化
それにしても気になるのは、その後ソ連はどうなったのであろうか、ということだ。例えば、当時はシャワーも満足に出ないし、レストランも注文から料理が出てくるまで1時間以上かかったようだ。今もそうなのだろうか。そして零下60度の世界は、今もきっちり60度なのだろうか。前に永久凍土が溶けているという話を聞いたことがあるので、多分、大きく様変わりしているであろう。社会情勢もずっとよくなったはずだ。国際情勢にきわめて疎い俺に何か今のロシアを知るお勧めの本があれば教えて欲しいところである。

評価点:74点
ちなみに、「ロシアにおけるニタリノフの便座について」という本にもこのロシア編の記事が出ている。椎名氏の本は数が多いのでエピソードがたぶっている事もあるが、逆に関連が分かって面白い面もある。あと、恐ろしいことにYouTubeでこのシベリアのドキュメンタリーが観られる。えらい時代になったなぁ、と改めて思った。

fusyoku.jpg先取りした時代も読むのが遅すぎた
~'08ホラーサスペンス特集(8)
日常生活が何ものかに侵食されていく……という内容の表紙裏の紹介文に惹かれて購入したが、中身は完全なSF作品。宇宙船のエンジニアに憧れる少女が、崩壊していく世界の謎を探る。ホラー要素もあるのだが、一般的なホラーではなく、どちらかというとモンスター物に近い。そして、話のポイントは分かりやすく言えば某有名映画と全く同じだが、1986年に書かれているのでこちらの方が13年も早い。

昔懐かしいSF
ここの所、あまり日本人作家によるSFを読んでいなかったので、横文字名前の設定が懐かしい。対象年齢設定も完全な大人向けというより、中高生ぐらいがではないかと思う。近い雰囲気だと思ったのが、萩尾望都的SF世界(「11人いる!」など)だ。ちょっとテンション高めの会話劇はいかにもである。

途中で転回する
目次を見ると一目瞭然だが、途中で話の軸が大きく変わる。ここが一つの大きな山場である。このオチが前述した通り有名映画と同じなのだが、実は同じようなネタを自分も小説にしようと考えていたので、これはSF的には非常にオーソドックス(になってしまった)パターンなのかもしれない。当時の年代で読めば衝撃的だったのかもしれないが、何分20年以上前のSFである。「ああ、このパターンか」というのが正直な感想だ。

それなりに面白いが
途中の山場までは、幻想的な要素も含め少々退屈だった。作者がやりたいことは分かっているので、「その先」が気になるのであまり集中できない。一方、「その後」は漫画的な内容も含め脱力するのだが、一方でそこそこ楽しめないこともない。書かれた時代はコンピューターが未発達な状態だが、設定がそれ程科学的に精密でないのが幸いして、逆に古くなっていない。

ホラー文庫について
このホラー・サスペンス特集でも作品を探していると、よく角川ホラー文庫に出会うが、これがまた玉石混交過ぎて、ブランド買いできないのが辛いところ。「黒い家」や「ぼっけえきょうてえ」のような作品があるかと思うと「呪怨」があったりして、不用意に手が出せない。この作品も同じホラー文庫だが、ホラーというには少々苦しい。結末が少々荒っぽい気もするが、年代も考慮すれば、まずまずという所ではないか。

評価点:52点 普通のSF
あまり年代にこだわるのもどうかと思うが、テーマ的には10年くらい先取りしていたのではないかと思う。逆に言えば10年前くらいの流行ともいえる。ちなみに某映画とは(白反転します)マトリックスです。

bati.jpg良く出来た2時間ドラマ
~'08ホラーサスペンス特集(7)
心臓の特殊な手術であるバチスタ手術、成功率が低いこの手術で奇跡的に成功を続けているチームがあった。東城大学医学部付属病院の桐生恭一のチーム、通称「チーム・バチスタ」である。ところが、立て続けに手術に失敗し、患者が死んだ。果たしてこれは事故なのか、それとも殺人なのか。この謎に、内部調査を命じられた同じ大学の医師・田口公平が挑む。医療をテーマにしたベストセラー。その実力はいかに。

興味を引かれるドラマ
この作品は、本質的にミステリーではない。犯人探しの要素はあるが、それは主なテーマではないと感じた。この作品は、本質的に医療をテーマにした軽妙な会話劇だ。登場人物のキャラクターを立たせることに注意が払われており、それは会話や主人公のモノローグで進行する。細かく章を区切ることも忘れない。途中まで読んで、似た印象のものを思い出した。これは2時間ドラマ的なのだ。

決して悪くはない
映画に2時間ドラマといえば、ほとんど悪口だが、小説に対しては必ずしもそうではない。2時間分気軽に飽きずに楽しめ、ちょっとした余韻もある。この作品がこれだけ売れているということは、この「軽さ」に対してはかなりのニーズがあるということだろう。キャラクターも立ってはいるが、どことなく漫画的、小説的に言えばあと少しでジュブナイル小説というところだろう。酷評できる要素はあるが、全体のバランスはよい。

オチが納得できない
個人的には、犯人が納得できない。というより、謎解きが謎解きになっていない。ミステリーは、読者が予想していた展開を超えたトリックや謎が明かされた時にこそカタルシスが生じる。ところが、この小説は、専門的な医療がテーマなので、予想しようがないのである。「不可能な状態(密室)で何かが行われているということはわかるが、その不可能な状態が本当に不可能なのか確かめようがない」のである。主人公が一応、丁寧に調査していくが、読者を作者目線の「常識」に高めるほどではない。

印象には残る
後半登場するホームズ役の白鳥というキャラクターは非常に印象に残る。破壊的なキャラクターで、京極夏彦の京極堂シリーズをご存知の方なら「榎木津」と言えばわかるだろうか。ただし、快刀乱麻を断つ、という存在なのだがエキセントリックすぎて感情移入できなかった。前半の丁寧な流れの方が好感が持てた。このキャラクターがいないと凡作になっていた可能性もあるが、これはやりすぎだろうと感じた。総合すると、気軽に楽しめる医療ドラマという意味では秀逸、好きか嫌いかといえば「それほど」、人に薦めるなら「軽い読書を求めている方に」という感じである。

評価点:64点 軽妙な医療会話劇
以前に「四日間の奇跡」で騙されてからは、ミステリーのランキングは参考程度にしか信用しなくなったが、この作品が大賞というのもいかにも信用できない。いっそ「このミステリーは読みやすい」くらいにした方がいいのではないか。
ちなみに、ホラー要素はもちろん0。サスペンスとしてはまずまず。
(Kiura)

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