乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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72点
ワイヤーアクションとVFXは友好関係を結べるか?
アン・リーがこの作品でアカデミー外国映画賞を受賞してから早くも10年近くが経過するが「ラスト・コーション」みたいな作品を残せるとは当時思っていなかった。当時の記憶では竹林の上で対決するなど変わったワイヤーアクションを使うカンフー映画みたいな印象しか残っていなかった。しかし改めて観てみるとアクションよりも人間ドラマに重点を置いた作品だったんだと感じた、アクションはあくまで作品を盛り上げる一要素にすぎなかったのである。
この映画でワイヤーアクションは全世界に知られる事になったが、往年の韓国映画とは全く違った使い方をしていて戦闘シーンも迫力はあるのだが妙に優雅でファンタジーな画づくりになっている。特に家から家へ飛ぶ様はある意味でドラゴンボールの舞空術である。ある意味で嘘の動きなのだが、CGでやたらめっぽうに飛び回るよりは全然味がある。おそらく、演じる側からすればブルーバックで何となくイメージして演じるよりも数倍リアルな演技が出来ると思われる。話は逸れるかハリウッドで製作中の実写版ドラゴンボールは果たしてどんな風に飛んでいるのか興味が湧く、殆どの可能性でアメコミ実写版のようなCGで人を飛ばすことになりそうだが、韓国や中国映画のワイヤーアクションを参考にできるだけ現実(漫画の世界だが)離れしない世界を作って欲しい。
<GOOD POINT>
1.やはり剣をめぐる物語だけあって剣を使った戦いはとても良く撮られている。特に細かいカットを矢継ぎ早に繋げている訳ではなく、非常に丁寧に一つ一つのアクションとカット割りが考えられているので全体を通して芸術的な剣裁きと緊張感が得られていると思われる。こういった繋ぎは日本映画ではなかなか観ることができない。アクションの撮影方法として非常に参考になる。イェン(チャン・ツィイー)よりシューリン(ミシェル・ヨー)の方が強く、ムーバイ(チョウ・ユンファ)が更にその上をいく腕を持っているという事がアクションの中で上手く描かれているのも見逃せない。
2.中国大陸の大パノラマシーンが出て来るが、驚くのはどれも幻想的な風景でファンタジーな効果を高めている。綿密に撮影場所を吟味しているか優秀な観光案内がいるのか分からないが、イェンがロー(チャン・チェン)から逃れてるが力尽きて倒れるたった1カットのみしか映されない風景など本当に画と人物の心がマッチしていて素晴らしい。
<BAD POINT>
1.物語はやや稚拙だ。結局、グリーン・デスティニーを巡る人間模様を描こうとしているのだが、剣の所有者であるムーバイが剣を封印して権利を放棄したにもかかわらず後身を育てたい気持ちがあるため中途半端な脚本になっている。敵であるイェンが腕が立つので弟子にしたいなんて我が儘をムーバイのぐらいの男が言うのも納得できないし、だったら愛すべきシューリンと子供を作って伝承するようにすれば良いのではと思うのが普通なのだが。あとイェンが滝に身をなげるシーンはCGではなくてワイヤーを使って欲しかった。
(IE5)
グリーン・ディスティニー(2000) - goo 映画
ワイヤーアクションとVFXは友好関係を結べるか?
アン・リーがこの作品でアカデミー外国映画賞を受賞してから早くも10年近くが経過するが「ラスト・コーション」みたいな作品を残せるとは当時思っていなかった。当時の記憶では竹林の上で対決するなど変わったワイヤーアクションを使うカンフー映画みたいな印象しか残っていなかった。しかし改めて観てみるとアクションよりも人間ドラマに重点を置いた作品だったんだと感じた、アクションはあくまで作品を盛り上げる一要素にすぎなかったのである。
この映画でワイヤーアクションは全世界に知られる事になったが、往年の韓国映画とは全く違った使い方をしていて戦闘シーンも迫力はあるのだが妙に優雅でファンタジーな画づくりになっている。特に家から家へ飛ぶ様はある意味でドラゴンボールの舞空術である。ある意味で嘘の動きなのだが、CGでやたらめっぽうに飛び回るよりは全然味がある。おそらく、演じる側からすればブルーバックで何となくイメージして演じるよりも数倍リアルな演技が出来ると思われる。話は逸れるかハリウッドで製作中の実写版ドラゴンボールは果たしてどんな風に飛んでいるのか興味が湧く、殆どの可能性でアメコミ実写版のようなCGで人を飛ばすことになりそうだが、韓国や中国映画のワイヤーアクションを参考にできるだけ現実(漫画の世界だが)離れしない世界を作って欲しい。
<GOOD POINT>
1.やはり剣をめぐる物語だけあって剣を使った戦いはとても良く撮られている。特に細かいカットを矢継ぎ早に繋げている訳ではなく、非常に丁寧に一つ一つのアクションとカット割りが考えられているので全体を通して芸術的な剣裁きと緊張感が得られていると思われる。こういった繋ぎは日本映画ではなかなか観ることができない。アクションの撮影方法として非常に参考になる。イェン(チャン・ツィイー)よりシューリン(ミシェル・ヨー)の方が強く、ムーバイ(チョウ・ユンファ)が更にその上をいく腕を持っているという事がアクションの中で上手く描かれているのも見逃せない。
2.中国大陸の大パノラマシーンが出て来るが、驚くのはどれも幻想的な風景でファンタジーな効果を高めている。綿密に撮影場所を吟味しているか優秀な観光案内がいるのか分からないが、イェンがロー(チャン・チェン)から逃れてるが力尽きて倒れるたった1カットのみしか映されない風景など本当に画と人物の心がマッチしていて素晴らしい。
<BAD POINT>
1.物語はやや稚拙だ。結局、グリーン・デスティニーを巡る人間模様を描こうとしているのだが、剣の所有者であるムーバイが剣を封印して権利を放棄したにもかかわらず後身を育てたい気持ちがあるため中途半端な脚本になっている。敵であるイェンが腕が立つので弟子にしたいなんて我が儘をムーバイのぐらいの男が言うのも納得できないし、だったら愛すべきシューリンと子供を作って伝承するようにすれば良いのではと思うのが普通なのだが。あとイェンが滝に身をなげるシーンはCGではなくてワイヤーを使って欲しかった。
(IE5)
グリーン・ディスティニー(2000) - goo 映画
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意外にコミカルな生粋の娯楽映画
黒澤明監督の不朽の名作と聞いていたが、今回初めて観た。もちろん、最近リメイクされたので興味が湧いたというのもある。完全ネタバレで感想を書くので未観の方は注意を。
物語の基本プロットは、お家再興を目指してお姫様(雪姫=上原美佐)とその忠臣(真壁六郎太=三船敏郎)、百姓の二人(太平=千秋実、又七=藤原釜足)が軍資金を抱えて敵陣を突破する。 実にきっぱりとした内容で、次から次に陥るピンチを潜り抜けていくのが見所だ。
まず、感じたのは人物の描写にたっぷり時間をかけていること。最近の映画を見慣れた目からすると、少々スローに感じたが、それがちゃんと後半に生きてくるのはさすが。特に百姓の二人は、善人キャラになりきれずにストーリーをかき回すのでハラハラする。この二人を「頂きたい」と思わせるだけの魅力がある。他のキャラも過不足なく描かれる。最初から最後まで美人に見えない姫だが、ラスト付近で歌を歌うシーンは、説得力があり、なかなかジーンと来た。最後に二人に「さらばじゃ」というのも良い。
殺陣のシーンや祭りのシーンなど、単純に映画として変化に富んでいて面白い。IE5が「映画には意外性が必要」と言っていたが、大筋は決まっているのに、予想外に転がるシーンが多くて楽しめた。例を挙げると、侍に馬を取られる(断れずに売る)→姫が娘を助ける→馬がなくなって難儀する→そのお陰で風体が変わって難を逃れる→と思ったら、すぐにばれる→見せ場の馬上殺陣→槍対決と、「こうなるだろう」という方向に行かない。すぐに裏切ろうとする太平と又七の二人も素敵だ。
ただ、古い映画をVHSで観たので台詞が聞き取りにくかったり、暗くて細部が分からなかったシーンもある。これに関しては、全く同じ映像を高解像度で見たいと思った。また、敵が間近に迫っているようで、案外のんびりしていたりと不思議に思うシーンもある。
全体的には役者の存在感にも支えられ、風格のある映画だと思った。ラストも、もっと下品に盛り上げられたはずだが、あれぐらいで止めたお陰で余韻があるのだろう。映画のラストがドカーン、バキューンばかりでは能がないというのがよく分かる。黒澤作品と相性があまりよくない俺でも、もう一度観たいと思える作品だった。
評価点:85点
音楽も意外にはまっていた。祭りのシーンは姫ではなくても、楽しいと思われる。笑えるシーンが案外多くて、娯楽には笑いが不可欠だと感じた。
(リメイクに関して一言)
リメイクを観たわけではないので、ホームページと予告の印象だけで一言。まず、何でこの映画をみてラブストーリーにするのか。この映画の魅力は太平と又七の「庶民の視点」じゃないのか。観客は、あの二人に感情移入して、ハラハラしながら楽しむはず。俺は、最後に姫や六郎太が正体を明かした時に、「あ、兄貴!」とか「おしの女!」とか言うと思ったが、言わなかった。それが「ユキ、俺と逃げよう」では、流行のネット小説か昼メロじゃないか。勝手に逃げろと怒りが湧いた。
この映画は、時代背景やキャラクターのバランスも含めて、かなり考えられて作られているので、何か一つを変えると、もとの魅力が雲散霧消してしまうのは俺でも分かる。せいぜい、着弾した煙がすぐに消えるのを直すくらいでいいのだ。ガメラは元々子供向けだからあれでも全然良かったが、樋口監督のトンチンカンな「現代風アレンジ」は失敗だと思う。むしろ太平と又七と「悪人ぶり」をクローズアップすべきでは。少なくとも、あの予告を見て、改めて見たいとは思わなかった。本当に勿体ない。
(Kiura)
黒澤明監督の不朽の名作と聞いていたが、今回初めて観た。もちろん、最近リメイクされたので興味が湧いたというのもある。完全ネタバレで感想を書くので未観の方は注意を。
物語の基本プロットは、お家再興を目指してお姫様(雪姫=上原美佐)とその忠臣(真壁六郎太=三船敏郎)、百姓の二人(太平=千秋実、又七=藤原釜足)が軍資金を抱えて敵陣を突破する。 実にきっぱりとした内容で、次から次に陥るピンチを潜り抜けていくのが見所だ。
まず、感じたのは人物の描写にたっぷり時間をかけていること。最近の映画を見慣れた目からすると、少々スローに感じたが、それがちゃんと後半に生きてくるのはさすが。特に百姓の二人は、善人キャラになりきれずにストーリーをかき回すのでハラハラする。この二人を「頂きたい」と思わせるだけの魅力がある。他のキャラも過不足なく描かれる。最初から最後まで美人に見えない姫だが、ラスト付近で歌を歌うシーンは、説得力があり、なかなかジーンと来た。最後に二人に「さらばじゃ」というのも良い。
殺陣のシーンや祭りのシーンなど、単純に映画として変化に富んでいて面白い。IE5が「映画には意外性が必要」と言っていたが、大筋は決まっているのに、予想外に転がるシーンが多くて楽しめた。例を挙げると、侍に馬を取られる(断れずに売る)→姫が娘を助ける→馬がなくなって難儀する→そのお陰で風体が変わって難を逃れる→と思ったら、すぐにばれる→見せ場の馬上殺陣→槍対決と、「こうなるだろう」という方向に行かない。すぐに裏切ろうとする太平と又七の二人も素敵だ。
ただ、古い映画をVHSで観たので台詞が聞き取りにくかったり、暗くて細部が分からなかったシーンもある。これに関しては、全く同じ映像を高解像度で見たいと思った。また、敵が間近に迫っているようで、案外のんびりしていたりと不思議に思うシーンもある。
全体的には役者の存在感にも支えられ、風格のある映画だと思った。ラストも、もっと下品に盛り上げられたはずだが、あれぐらいで止めたお陰で余韻があるのだろう。映画のラストがドカーン、バキューンばかりでは能がないというのがよく分かる。黒澤作品と相性があまりよくない俺でも、もう一度観たいと思える作品だった。
評価点:85点
音楽も意外にはまっていた。祭りのシーンは姫ではなくても、楽しいと思われる。笑えるシーンが案外多くて、娯楽には笑いが不可欠だと感じた。
(リメイクに関して一言)
リメイクを観たわけではないので、ホームページと予告の印象だけで一言。まず、何でこの映画をみてラブストーリーにするのか。この映画の魅力は太平と又七の「庶民の視点」じゃないのか。観客は、あの二人に感情移入して、ハラハラしながら楽しむはず。俺は、最後に姫や六郎太が正体を明かした時に、「あ、兄貴!」とか「おしの女!」とか言うと思ったが、言わなかった。それが「ユキ、俺と逃げよう」では、流行のネット小説か昼メロじゃないか。勝手に逃げろと怒りが湧いた。
この映画は、時代背景やキャラクターのバランスも含めて、かなり考えられて作られているので、何か一つを変えると、もとの魅力が雲散霧消してしまうのは俺でも分かる。せいぜい、着弾した煙がすぐに消えるのを直すくらいでいいのだ。ガメラは元々子供向けだからあれでも全然良かったが、樋口監督のトンチンカンな「現代風アレンジ」は失敗だと思う。むしろ太平と又七と「悪人ぶり」をクローズアップすべきでは。少なくとも、あの予告を見て、改めて見たいとは思わなかった。本当に勿体ない。
(Kiura)
80点
ただのバブル青春映画と侮るなかれ
「私をスキーに連れてって」「彼女が水着に着替えたら」「波の数ほど抱きしめて」の三作品をまとめてバブル青春映画三部作と呼ばれているが全て未見である。三作も作れたのは第一弾の本作のヒットの賜物だろう。さすがに当時小学生だったのでバブルとは無縁だが、ユーミンが大ブームになった事と、近所のお姉ちゃんがOL(どこかの社長秘書をしていた)をしていて映画を観てスキーに嵌ったという事はハッキリと記憶している。なんかスキーウェアも毎年替えていたような・・・バブル時代とはそういう時代だったのか?
しかしながらバブル時代の青春映画とタカをくくっていると意外に面白かったので驚いた。はっきり言ってこれに比べれば「銀色のシーズン」なんて見てられない。バブル時代のリッチーな若者像は今本人達が見ても赤面するだろうが、信頼できる仲間たちや仕事に日夜悪戦苦闘するサラリーマン事情などは上手く見せているし、一番良いのはスキーに対して興味が湧くということだ。おそらく当時この映画を観てタイトル通りのセリフを彼氏に言った女性は多かったんじゃないだろうか?そういった意味では最近の映画はストレートさに欠いているんだなぁ・・・目から鱗みたいな映画だった。
<GOOD POINT>
1.滑りながら一人一人が合体して芋虫みたいになったり、スキー板を雪に差してイスに変えて空を眺めたり、スキーの後はロッジでパーティーを、などなどスキー場ではこんな楽しみ方ができますよというシーンが満載している。もちろんスキー場には恋の出会いもありますよというアピールも忘れていない。ある意味でスキーのPR映像なのだが、原田知世や三上博史たちが心からスキーを楽しんでいるのを見ていると「ああ、スキーに行きたいな」と思ってしまっても当然と思われる。
2.夜の格好禁止区域を滑っていくシーンはなかなか迫力がある。スキーヤーの目線として撮影しているのはカメラマンが実際に滑っているのだろうが、ちゃんと俳優陣(もしかすると背中越しはプロかも)が滑っている。特に池上優(原田知世)は下手で何度もこけないといけないのだが、辛抱強く撮影に挑んでいたことが伺える。青春映画といえどもこうした緊迫感あるシーンが入っていると男性の食いつきも違ってくる。いま思い出したがそのお姉ちゃんに勧められて観たのが「トップガン」、なるほど青春映画に戦闘機のバトルシーンが入っていて楽しんでいた記憶が蘇える。
3.佐藤真理子(原田貴和子)が優に矢野文夫(三上博史)の過去話をするシーンが沢山ある(真理子と矢野は子供の頃から友達という設定)。そこで矢野が女に対してどれだけデリカシーがなくてヒドイ男かという事を優に教えながらも矢野と上手く交際できるように応援していくのだが、実はそのデリカシーがない話しの中で出て来た女が真理子自身だった(つまり真理子は矢野が好きだった)と
意外な事実を上手く劇中で表現している。なかなか脚本もセリフも良くて感心する。
<BAD POINT>
1.もう一昔前の話なので突っ込むことも特にないのだが、一つだけ挙げるとすれば今までにスキー場に何度も足を運んだが、こんな素敵な出会いは一度も無かったということだけですな・・・。
(IE5)
私をスキーに連れてって(1987) - goo 映画
ただのバブル青春映画と侮るなかれ
「私をスキーに連れてって」「彼女が水着に着替えたら」「波の数ほど抱きしめて」の三作品をまとめてバブル青春映画三部作と呼ばれているが全て未見である。三作も作れたのは第一弾の本作のヒットの賜物だろう。さすがに当時小学生だったのでバブルとは無縁だが、ユーミンが大ブームになった事と、近所のお姉ちゃんがOL(どこかの社長秘書をしていた)をしていて映画を観てスキーに嵌ったという事はハッキリと記憶している。なんかスキーウェアも毎年替えていたような・・・バブル時代とはそういう時代だったのか?
しかしながらバブル時代の青春映画とタカをくくっていると意外に面白かったので驚いた。はっきり言ってこれに比べれば「銀色のシーズン」なんて見てられない。バブル時代のリッチーな若者像は今本人達が見ても赤面するだろうが、信頼できる仲間たちや仕事に日夜悪戦苦闘するサラリーマン事情などは上手く見せているし、一番良いのはスキーに対して興味が湧くということだ。おそらく当時この映画を観てタイトル通りのセリフを彼氏に言った女性は多かったんじゃないだろうか?そういった意味では最近の映画はストレートさに欠いているんだなぁ・・・目から鱗みたいな映画だった。
<GOOD POINT>
1.滑りながら一人一人が合体して芋虫みたいになったり、スキー板を雪に差してイスに変えて空を眺めたり、スキーの後はロッジでパーティーを、などなどスキー場ではこんな楽しみ方ができますよというシーンが満載している。もちろんスキー場には恋の出会いもありますよというアピールも忘れていない。ある意味でスキーのPR映像なのだが、原田知世や三上博史たちが心からスキーを楽しんでいるのを見ていると「ああ、スキーに行きたいな」と思ってしまっても当然と思われる。
2.夜の格好禁止区域を滑っていくシーンはなかなか迫力がある。スキーヤーの目線として撮影しているのはカメラマンが実際に滑っているのだろうが、ちゃんと俳優陣(もしかすると背中越しはプロかも)が滑っている。特に池上優(原田知世)は下手で何度もこけないといけないのだが、辛抱強く撮影に挑んでいたことが伺える。青春映画といえどもこうした緊迫感あるシーンが入っていると男性の食いつきも違ってくる。いま思い出したがそのお姉ちゃんに勧められて観たのが「トップガン」、なるほど青春映画に戦闘機のバトルシーンが入っていて楽しんでいた記憶が蘇える。
3.佐藤真理子(原田貴和子)が優に矢野文夫(三上博史)の過去話をするシーンが沢山ある(真理子と矢野は子供の頃から友達という設定)。そこで矢野が女に対してどれだけデリカシーがなくてヒドイ男かという事を優に教えながらも矢野と上手く交際できるように応援していくのだが、実はそのデリカシーがない話しの中で出て来た女が真理子自身だった(つまり真理子は矢野が好きだった)と
意外な事実を上手く劇中で表現している。なかなか脚本もセリフも良くて感心する。
<BAD POINT>
1.もう一昔前の話なので突っ込むことも特にないのだが、一つだけ挙げるとすれば今までにスキー場に何度も足を運んだが、こんな素敵な出会いは一度も無かったということだけですな・・・。
(IE5)
私をスキーに連れてって(1987) - goo 映画
63点
全てはケイト・ブランシェットのボブ・ディランの為に
ボブ・ディランの伝記映画という触れ込みだが、実際は史実に沿った物語と想像の物語をごちゃ混ぜにした感じである。やはり目玉はボブ・ディランを演じる俳優が6人いることだ、幼少から晩年までを各パートごとに別れて演じるている。しかし名前は全員ボブ・ディランを名乗っておらず、ジャックやジュードやビリー、ロビーなど紛らわしい名前を使い分けている。この名前の信憑性の有無は全く分からないが、知識の無いものが観るとこの時点でまず振り落とされそうになる。
しかしリチャード・ギア、クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー(なんと今年1月に28歳で永眠・・・残念無念)など有名・実力派俳優が揃っている中で一際存在感を出していたのがケイト・ブランシェットだ。彼女が演じたボブ・ディランの時代こそ音楽的にも一番有名な時期だ。当時の記録映像も残っているだけに観る側の採点も厳しくなりがちだが、ケイト・ブランシェットの演技はもうパーフェクトとしかいいようのない程にボブ・ディランになりきっていた。しぐさ、しゃべり方、どれをとってもボブ・ディランにしか見えない。更にヘアスタイルや衣装も素晴らしくて、ケイトのパートを観るだけでも充分に価値があると感じた。
ただ映画の内容に関してはマニアでも首を傾げる内容であることは間違いない、たとえボブ・ディランマニアでも作品の意図を理解することはほぼ不可能と思われる。
<GOOD POINT>
1.上にも書いたようにケイト・ブランシェットのボブ・ディランを観よ!である。俺も時間があればマーティン・スコセッシが監督したボブ・ディランのドキュメンタリー映画「ノー・ディレクション・ホーム」をチェックして更に視野を拡げたいと考えている。
2.画の構図のセンスが素晴らしい、一見何気なく撮影しているように見えるが結構計算してアングルを練っている。車の窓ガラスに写るディランと女のショットなんか凄い良かった。パーティーのシーンで壁に映されたディランの映像の数々も良い効果を生んでいたと思われる。スタイリッシュな映像が好きな人は楽しめるだろう。
<BAD POINT>
1.ケイトのディラン以外の5人が演じるパートは殆ど意味が分からない。特にリチャード・ギアの下りはセリフの意味が一つも分からなかった・・・まぁ最後に貨物列車で幼き日のギターを見つけるという下りをみて全て幻想なのかな?とも思ったが。
2.名曲「LIKE A ROLLING STONE」を一番だけで終わらすなんて勿体ない!この曲だけは初めから終わりまで聴きたいとファンは願っているはずだ。
(IE5)
アイム・ノット・ゼア - goo 映画
海外版の予告編。6人のボブディランが結集、音楽は勿論「LIKE A ROLLING STONE」
全てはケイト・ブランシェットのボブ・ディランの為に
ボブ・ディランの伝記映画という触れ込みだが、実際は史実に沿った物語と想像の物語をごちゃ混ぜにした感じである。やはり目玉はボブ・ディランを演じる俳優が6人いることだ、幼少から晩年までを各パートごとに別れて演じるている。しかし名前は全員ボブ・ディランを名乗っておらず、ジャックやジュードやビリー、ロビーなど紛らわしい名前を使い分けている。この名前の信憑性の有無は全く分からないが、知識の無いものが観るとこの時点でまず振り落とされそうになる。
しかしリチャード・ギア、クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー(なんと今年1月に28歳で永眠・・・残念無念)など有名・実力派俳優が揃っている中で一際存在感を出していたのがケイト・ブランシェットだ。彼女が演じたボブ・ディランの時代こそ音楽的にも一番有名な時期だ。当時の記録映像も残っているだけに観る側の採点も厳しくなりがちだが、ケイト・ブランシェットの演技はもうパーフェクトとしかいいようのない程にボブ・ディランになりきっていた。しぐさ、しゃべり方、どれをとってもボブ・ディランにしか見えない。更にヘアスタイルや衣装も素晴らしくて、ケイトのパートを観るだけでも充分に価値があると感じた。
ただ映画の内容に関してはマニアでも首を傾げる内容であることは間違いない、たとえボブ・ディランマニアでも作品の意図を理解することはほぼ不可能と思われる。
<GOOD POINT>
1.上にも書いたようにケイト・ブランシェットのボブ・ディランを観よ!である。俺も時間があればマーティン・スコセッシが監督したボブ・ディランのドキュメンタリー映画「ノー・ディレクション・ホーム」をチェックして更に視野を拡げたいと考えている。
2.画の構図のセンスが素晴らしい、一見何気なく撮影しているように見えるが結構計算してアングルを練っている。車の窓ガラスに写るディランと女のショットなんか凄い良かった。パーティーのシーンで壁に映されたディランの映像の数々も良い効果を生んでいたと思われる。スタイリッシュな映像が好きな人は楽しめるだろう。
<BAD POINT>
1.ケイトのディラン以外の5人が演じるパートは殆ど意味が分からない。特にリチャード・ギアの下りはセリフの意味が一つも分からなかった・・・まぁ最後に貨物列車で幼き日のギターを見つけるという下りをみて全て幻想なのかな?とも思ったが。
2.名曲「LIKE A ROLLING STONE」を一番だけで終わらすなんて勿体ない!この曲だけは初めから終わりまで聴きたいとファンは願っているはずだ。
(IE5)
アイム・ノット・ゼア - goo 映画
海外版の予告編。6人のボブディランが結集、音楽は勿論「LIKE A ROLLING STONE」
20点
もう黒澤リメイクはやめてくれ!
去年から黒澤映画はリメイクのオンパレードである。TVドラマでは「生きる」「天国と地獄」、映画でも森田芳光「椿三十郎」、そして今回の「隠し砦の三悪人」である。黒澤プロはどういう理由かは分からないが経営が上手く行っていないらしく、全作品がDVDとして売り切られた後は黒澤明が作り上げた権利という権利を叩き売りしている。ここでは詳細は割愛するがリメイクされた結果はどれも大した評価もされておらず時の流れに早くも埋もれようとしている。
なぜリメイクがこんなに多いのにはオリジナル脚本が殆ど無いことと一定のファンを取り込める可能性がある原作モノに走りすぎていることが挙げられてるが、その原作モノの映画化も邦画バブルの大量生産に併せてあらかた食べ尽くされた感があり、製作費を握る首脳陣達の考えは「では過去の名作をリメイクしよう」となったハズである。おそらく黒澤リメイクが当たると、小津映画、溝口映画というようにドンドン名作リメイク大会に拍車が掛かったと思われる。
しかし!この「隠し砦の三悪人」を見る限り言えることは黒澤映画、ひいては過去の名作をリメイクするのは辞めた方が良いと言わざるを得ない。その場の収益が上がる訳でも無く、いたずらに作品をつついているだけのリメイクは原作者に対してファンに対して失礼であると感じた。面白くないだけの感情に加えて、なんとも言えないやるせなさがあるのである。
<GOOD POINT>
1.真壁六郎太を演じた阿部寛だけは唯一光っている。三船敏郎の六郎太のイメージを崩すことなく、しかもオリジナルな阿部・六郎太がそこにいた。こういった芝居もできた事に正直に驚いた、元々長身で体格もよく長刀を振り回しても格好がつくのがいい。かつて「はいからさんが通る」(ナンノ<南野陽子>がはいからさん)で銀幕デビューしてから20年以上も経つが良い俳優になった。
2.衣装と美術はもの凄く良い、特に服の汚しや痛み具合は相当に力が入っていたと思われる。それだけに人物が現代人ぽく写って軽く見えてしまったのだが・・・。
<BAD POINT>
1.全てはシナリオをいじりすぎているということだ。まず長澤まさみと松本潤のラブストーリー映画にしてしまった事、更に東宝シンデレラガールの長澤まさみとジャニーズの松本潤という政治的な立場の為に突っ込んだ物語に仕立てあげることができていない事が挙げられる。書いていくとキリがないが、秋月の姫を演じる長澤まさみに一切「艶っぽい」芝居を付けさせることができないのであればラブストーリーにすべきではない、例えば金塊のありかを六郎太に迫る敵将のセリフ「吐け!吐かないと姫の体がいつまで耐えられるかな?フフフ・・・」とくれば姫が犯されてるか棒で殴られてるかを想像するハズであるが、次のカットでは牢屋で普通に座っておまけに歌を唄っているのである・・・なんだこれ?って思わない方がおかしいだろう。政治的に「ウチのまさみはオッパイ出せません」ならそう言うシナリオを書くべきである。まぁおそらくどんなに頑張っても中盤の村祭りの後から観客の期待は裏切られていくと思われる。
2.「隠し砦の三悪人」で六郎田(三船敏郎)と槍の使い手の武士(藤田進)が戦う大好きな名シーンがあるのだが、一切リメイクではカットされている。武士としてのキャラクターは高嶋政宏が演じてはいるのだが対決シーンなどなく、ちょっと色ボケした武士になっているだけであった。こういったものを省いてスターウォーズのパロディと思わせるものが多々挿入されている事に憤りを感じる。
「スターウォーズ」の元になっているのが「隠し砦の三悪人」という話は有名だが、だからと言って敵将の顔まで覆った黒兜はダース・ベイダーだとか、砦の高い空洞をジャンプする所はデス・スター内部のルークとレイアという事を分かっても「だから何なの?」としか思えない。それよりも原作を現代で蘇らせたらこんなに凄いんだ!という事を見せるのがリメイクする者の使命と思うのだが。
3.いつもの事ながら大げさな音楽と無意味な長回しがあったことを付け加えておこう。
(IE5)
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS - goo 映画
もう黒澤リメイクはやめてくれ!
去年から黒澤映画はリメイクのオンパレードである。TVドラマでは「生きる」「天国と地獄」、映画でも森田芳光「椿三十郎」、そして今回の「隠し砦の三悪人」である。黒澤プロはどういう理由かは分からないが経営が上手く行っていないらしく、全作品がDVDとして売り切られた後は黒澤明が作り上げた権利という権利を叩き売りしている。ここでは詳細は割愛するがリメイクされた結果はどれも大した評価もされておらず時の流れに早くも埋もれようとしている。
なぜリメイクがこんなに多いのにはオリジナル脚本が殆ど無いことと一定のファンを取り込める可能性がある原作モノに走りすぎていることが挙げられてるが、その原作モノの映画化も邦画バブルの大量生産に併せてあらかた食べ尽くされた感があり、製作費を握る首脳陣達の考えは「では過去の名作をリメイクしよう」となったハズである。おそらく黒澤リメイクが当たると、小津映画、溝口映画というようにドンドン名作リメイク大会に拍車が掛かったと思われる。
しかし!この「隠し砦の三悪人」を見る限り言えることは黒澤映画、ひいては過去の名作をリメイクするのは辞めた方が良いと言わざるを得ない。その場の収益が上がる訳でも無く、いたずらに作品をつついているだけのリメイクは原作者に対してファンに対して失礼であると感じた。面白くないだけの感情に加えて、なんとも言えないやるせなさがあるのである。
<GOOD POINT>
1.真壁六郎太を演じた阿部寛だけは唯一光っている。三船敏郎の六郎太のイメージを崩すことなく、しかもオリジナルな阿部・六郎太がそこにいた。こういった芝居もできた事に正直に驚いた、元々長身で体格もよく長刀を振り回しても格好がつくのがいい。かつて「はいからさんが通る」(ナンノ<南野陽子>がはいからさん)で銀幕デビューしてから20年以上も経つが良い俳優になった。
2.衣装と美術はもの凄く良い、特に服の汚しや痛み具合は相当に力が入っていたと思われる。それだけに人物が現代人ぽく写って軽く見えてしまったのだが・・・。
<BAD POINT>
1.全てはシナリオをいじりすぎているということだ。まず長澤まさみと松本潤のラブストーリー映画にしてしまった事、更に東宝シンデレラガールの長澤まさみとジャニーズの松本潤という政治的な立場の為に突っ込んだ物語に仕立てあげることができていない事が挙げられる。書いていくとキリがないが、秋月の姫を演じる長澤まさみに一切「艶っぽい」芝居を付けさせることができないのであればラブストーリーにすべきではない、例えば金塊のありかを六郎太に迫る敵将のセリフ「吐け!吐かないと姫の体がいつまで耐えられるかな?フフフ・・・」とくれば姫が犯されてるか棒で殴られてるかを想像するハズであるが、次のカットでは牢屋で普通に座っておまけに歌を唄っているのである・・・なんだこれ?って思わない方がおかしいだろう。政治的に「ウチのまさみはオッパイ出せません」ならそう言うシナリオを書くべきである。まぁおそらくどんなに頑張っても中盤の村祭りの後から観客の期待は裏切られていくと思われる。
2.「隠し砦の三悪人」で六郎田(三船敏郎)と槍の使い手の武士(藤田進)が戦う大好きな名シーンがあるのだが、一切リメイクではカットされている。武士としてのキャラクターは高嶋政宏が演じてはいるのだが対決シーンなどなく、ちょっと色ボケした武士になっているだけであった。こういったものを省いてスターウォーズのパロディと思わせるものが多々挿入されている事に憤りを感じる。
「スターウォーズ」の元になっているのが「隠し砦の三悪人」という話は有名だが、だからと言って敵将の顔まで覆った黒兜はダース・ベイダーだとか、砦の高い空洞をジャンプする所はデス・スター内部のルークとレイアという事を分かっても「だから何なの?」としか思えない。それよりも原作を現代で蘇らせたらこんなに凄いんだ!という事を見せるのがリメイクする者の使命と思うのだが。
3.いつもの事ながら大げさな音楽と無意味な長回しがあったことを付け加えておこう。
(IE5)
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS - goo 映画