乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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88点
今年の日本映画、注目作の最終便が遂に登場。
今年度のカンヌ映画祭、「ある視点」部門の審査員特別賞を受賞。「ある視点」部門とは個性的で将来性のある作品を対象とする作品とされている。個人的な解釈とすれば大衆向けでない作品の事を指しているのかなと思っているのだが、つまり商業的ではない事にも繋がるのかな・・・と。審査員特別賞は大賞に次ぐ賞ということだが予告編を観た時からスクリーンから良さそうな雰囲気を感じていた。
監督の黒沢清は日本を代表するホラー監督という位置づけだが、その人気は特にヨーロッパで高い。その黒沢自身が、「少なくとも日本ではホラーはもう当たらない」と公言しているのだから実際にそうなのだろう。たしかに「リング」から始まったホラーブームは終焉と言っても過言ではなく、一部のマニア向けに量産されている感は否めない。しかも質的にも過去の亜流が多く、ブームの中で殆どの手法が出尽くしたのでは無いだろうかとも感じられる。そんな中で黒沢監督が選んだ題材は「家族」、今までホラー以外として「ニンゲン合格」や「アカルイミライ」などの良い人間ドラマを描いた映画を残しているが、ストレートな家族ものは今回が初めてで期待は高まった。映画は大変良く、題材はなんであれ紛れもなく黒沢ワールドに満ち溢れた映画であった。そしてホラー以外の可能性の広がりを受けて、これからの作品も大いに期待したいと感じる作品である。
<GOOD POINT>
1.ポスターや予告編では全く予想できないが、とにかく笑える。中途半端なでコメディ映画よりも笑える。リストラされた冴えないサラリーマン佐々木竜平(香川照之)とその家族の在り方を描いているのだが、家族の微妙なズレと社会から阻害されていく中でもがいている姿自体は不憫なのにこれだけ笑えるのはどうしてかとずっと考えていいた。結論としては、一生懸命生きていこうとする人間って周りが見えないくらいに必死なんだという事と、その姿勢と実際に写る姿のシチュエーションのギャップが激しければ激しいほど観客としては面白く写るのだという事であろうと結論づけた。リストラ仲間の黒須(津田寛治)と這い上がろうとする姿。佐々木の次男・健二(井之脇海)が教師・小林(アンザッシュの児嶋一哉)に悪者にされて必死に言い返す姿。どれもが胸を打つシーンなのに笑えてしまうのだ。でもこの要素が映画をグッと魅力的なものにしてくれている事は間違いない。
2.黒沢清独特の演出=殆ど芝居らしい芝居をさせない・・・という感じが、とても良い効果を生んでいる。妻・恵(小泉今日子)と長男・貴を含む家族四人の誰もがラストまで剥き出しとしての感情を出さない。途中、ケンカがあるのだが少なくとも吠えているのは竜平だけでお互いが本音でぶつかり合ってはいない、吠えている竜平も訳が分かっていない。こういうアンバランスな雰囲気をずっと最後まで醸し出しながら引っ張れるのは黒沢清の力だと認めざるを得ない。この引っ張りがあるからこそ、一見あり得なさそうな家族がリアリティに満ち溢れてくるのだと感じた。
3.ピアノソナタはドビュッシーの「月の光」という曲らしい。俺は初めて聴いたのだが凄く良い曲で映画に大変合っていた。ラストでピアノを奏でる健二の芝居(もしかして本当に弾いていたのなら凄いの一言)も大した物だが、とても良いラストだったと思う。
<BAD POINT>
1.家を荒らした泥棒(役所広司)が恵を人質にとって逃げている過程で、竜平に会うまでは良かったのだが、その後が蛇足っぽい。海で叫ぶシーンも少し芝居じみているし、あなたは天使だというようなセリフも浮いている様に感じる。ここで結構テンションが下がった。もう少しあの一連を短くしていればもっと映画自体は締まったと思われる。
(IE5)
トウキョウソナタ - goo 映画
前にもアップしたけどもう一度、この予告編をどうぞ。
今年の日本映画、注目作の最終便が遂に登場。
今年度のカンヌ映画祭、「ある視点」部門の審査員特別賞を受賞。「ある視点」部門とは個性的で将来性のある作品を対象とする作品とされている。個人的な解釈とすれば大衆向けでない作品の事を指しているのかなと思っているのだが、つまり商業的ではない事にも繋がるのかな・・・と。審査員特別賞は大賞に次ぐ賞ということだが予告編を観た時からスクリーンから良さそうな雰囲気を感じていた。
監督の黒沢清は日本を代表するホラー監督という位置づけだが、その人気は特にヨーロッパで高い。その黒沢自身が、「少なくとも日本ではホラーはもう当たらない」と公言しているのだから実際にそうなのだろう。たしかに「リング」から始まったホラーブームは終焉と言っても過言ではなく、一部のマニア向けに量産されている感は否めない。しかも質的にも過去の亜流が多く、ブームの中で殆どの手法が出尽くしたのでは無いだろうかとも感じられる。そんな中で黒沢監督が選んだ題材は「家族」、今までホラー以外として「ニンゲン合格」や「アカルイミライ」などの良い人間ドラマを描いた映画を残しているが、ストレートな家族ものは今回が初めてで期待は高まった。映画は大変良く、題材はなんであれ紛れもなく黒沢ワールドに満ち溢れた映画であった。そしてホラー以外の可能性の広がりを受けて、これからの作品も大いに期待したいと感じる作品である。
<GOOD POINT>
1.ポスターや予告編では全く予想できないが、とにかく笑える。中途半端なでコメディ映画よりも笑える。リストラされた冴えないサラリーマン佐々木竜平(香川照之)とその家族の在り方を描いているのだが、家族の微妙なズレと社会から阻害されていく中でもがいている姿自体は不憫なのにこれだけ笑えるのはどうしてかとずっと考えていいた。結論としては、一生懸命生きていこうとする人間って周りが見えないくらいに必死なんだという事と、その姿勢と実際に写る姿のシチュエーションのギャップが激しければ激しいほど観客としては面白く写るのだという事であろうと結論づけた。リストラ仲間の黒須(津田寛治)と這い上がろうとする姿。佐々木の次男・健二(井之脇海)が教師・小林(アンザッシュの児嶋一哉)に悪者にされて必死に言い返す姿。どれもが胸を打つシーンなのに笑えてしまうのだ。でもこの要素が映画をグッと魅力的なものにしてくれている事は間違いない。
2.黒沢清独特の演出=殆ど芝居らしい芝居をさせない・・・という感じが、とても良い効果を生んでいる。妻・恵(小泉今日子)と長男・貴を含む家族四人の誰もがラストまで剥き出しとしての感情を出さない。途中、ケンカがあるのだが少なくとも吠えているのは竜平だけでお互いが本音でぶつかり合ってはいない、吠えている竜平も訳が分かっていない。こういうアンバランスな雰囲気をずっと最後まで醸し出しながら引っ張れるのは黒沢清の力だと認めざるを得ない。この引っ張りがあるからこそ、一見あり得なさそうな家族がリアリティに満ち溢れてくるのだと感じた。
3.ピアノソナタはドビュッシーの「月の光」という曲らしい。俺は初めて聴いたのだが凄く良い曲で映画に大変合っていた。ラストでピアノを奏でる健二の芝居(もしかして本当に弾いていたのなら凄いの一言)も大した物だが、とても良いラストだったと思う。
<BAD POINT>
1.家を荒らした泥棒(役所広司)が恵を人質にとって逃げている過程で、竜平に会うまでは良かったのだが、その後が蛇足っぽい。海で叫ぶシーンも少し芝居じみているし、あなたは天使だというようなセリフも浮いている様に感じる。ここで結構テンションが下がった。もう少しあの一連を短くしていればもっと映画自体は締まったと思われる。
(IE5)
トウキョウソナタ - goo 映画
前にもアップしたけどもう一度、この予告編をどうぞ。
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