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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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今年の日本映画、注目作の最終便が遂に登場。

今年度のカンヌ映画祭、「ある視点」部門の審査員特別賞を受賞。「ある視点」部門とは個性的で将来性のある作品を対象とする作品とされている。個人的な解釈とすれば大衆向けでない作品の事を指しているのかなと思っているのだが、つまり商業的ではない事にも繋がるのかな・・・と。審査員特別賞は大賞に次ぐ賞ということだが予告編を観た時からスクリーンから良さそうな雰囲気を感じていた。

監督の黒沢清は日本を代表するホラー監督という位置づけだが、その人気は特にヨーロッパで高い。その黒沢自身が、「少なくとも日本ではホラーはもう当たらない」と公言しているのだから実際にそうなのだろう。たしかに「リング」から始まったホラーブームは終焉と言っても過言ではなく、一部のマニア向けに量産されている感は否めない。しかも質的にも過去の亜流が多く、ブームの中で殆どの手法が出尽くしたのでは無いだろうかとも感じられる。そんな中で黒沢監督が選んだ題材は「家族」、今までホラー以外として「ニンゲン合格」や「アカルイミライ」などの良い人間ドラマを描いた映画を残しているが、ストレートな家族ものは今回が初めてで期待は高まった。映画は大変良く、題材はなんであれ紛れもなく黒沢ワールドに満ち溢れた映画であった。そしてホラー以外の可能性の広がりを受けて、これからの作品も大いに期待したいと感じる作品である。


<GOOD POINT>
1.ポスターや予告編では全く予想できないが、とにかく笑える。中途半端なでコメディ映画よりも笑える。リストラされた冴えないサラリーマン佐々木竜平(香川照之)とその家族の在り方を描いているのだが、家族の微妙なズレと社会から阻害されていく中でもがいている姿自体は不憫なのにこれだけ笑えるのはどうしてかとずっと考えていいた。結論としては、一生懸命生きていこうとする人間って周りが見えないくらいに必死なんだという事と、その姿勢と実際に写る姿のシチュエーションのギャップが激しければ激しいほど観客としては面白く写るのだという事であろうと結論づけた。リストラ仲間の黒須(津田寛治)と這い上がろうとする姿。佐々木の次男・健二(井之脇海)が教師・小林(アンザッシュの児嶋一哉)に悪者にされて必死に言い返す姿。どれもが胸を打つシーンなのに笑えてしまうのだ。でもこの要素が映画をグッと魅力的なものにしてくれている事は間違いない。

2.黒沢清独特の演出=殆ど芝居らしい芝居をさせない・・・という感じが、とても良い効果を生んでいる。妻・恵(小泉今日子)と長男・貴を含む家族四人の誰もがラストまで剥き出しとしての感情を出さない。途中、ケンカがあるのだが少なくとも吠えているのは竜平だけでお互いが本音でぶつかり合ってはいない、吠えている竜平も訳が分かっていない。こういうアンバランスな雰囲気をずっと最後まで醸し出しながら引っ張れるのは黒沢清の力だと認めざるを得ない。この引っ張りがあるからこそ、一見あり得なさそうな家族がリアリティに満ち溢れてくるのだと感じた。

3.ピアノソナタはドビュッシーの「月の光」という曲らしい。俺は初めて聴いたのだが凄く良い曲で映画に大変合っていた。ラストでピアノを奏でる健二の芝居(もしかして本当に弾いていたのなら凄いの一言)も大した物だが、とても良いラストだったと思う。


<BAD POINT>
1.家を荒らした泥棒(役所広司)が恵を人質にとって逃げている過程で、竜平に会うまでは良かったのだが、その後が蛇足っぽい。海で叫ぶシーンも少し芝居じみているし、あなたは天使だというようなセリフも浮いている様に感じる。ここで結構テンションが下がった。もう少しあの一連を短くしていればもっと映画自体は締まったと思われる。
(IE5)


トウキョウソナタ - goo 映画


前にもアップしたけどもう一度、この予告編をどうぞ。


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これの原型はドラゴンボールに違いない!

ウィル・スミスが主演した映画って意外と久しぶり・・・なんか、「インディペンデンス・デイ」の後から彼の役回りは大作映画のヒーローって奴ばかりでどうも観る気が起きなかったのである。しかし今回は予告編を観た時からちょっと違うものを感じていた。どうみても今までの自分のヒーロー像を逆手に取った自虐的なヒーローものになっているのだ。本人がまさかそれを意識してはいないだろうが、ここに目をつけた製作サイドの見事な着眼点とキャスティングはなかなか鋭いと思った。

でもウィル・スミスって製作サイドにとってはありがたい役者だなと思う。決して演技派ではないのだが、喜怒哀楽をハッキリと表現する事ができるし、役柄にそれほどこだわりを見せない、来る物拒まずという姿勢がいまのポジションを獲得していると思う。本人の人柄も愛想が良くて、家庭的というイメージがファンならずとも拡がっているのがこういった作品に起用されている要因の一つだと思うのだが。エディ・マーフィーともマーティー・フリードマンともデイゼル・ワシントンとも違うキャラクターをたしかに持っている、今後も活躍の場所に困ることはないだろう。


<GOOD POINT>
1.内容は超人的な力を持ち平和のために人を助けるキャラなのだがヒーローになりきれないという設定、これは本当に目からウロコの様な素晴らしい企画だった。主人公のハンコック(ウィル・スミス)は普段から酒浸りで人助けに出動しても、人を助ける反面周りの公共施設をことごとく破壊してしまい市民のひんしゅくを買ってしまうのだ。他にも浜に打ち上がったクジラを沖に投げてヨットを破壊したり、着地や飛行するたびに道路が破壊されていくなど、随所にドラゴンボールの世界が描かれてりうのだが。まぁ実際に悟空達が争ったあとなんかもこんな風になるんだろうなぁ・・・と思わずニヤリ。今までのステレオタイプなヒーロー像を逆手に取った見事な設定である。その見せ方も非常に皮肉っぽく、カッコイイ映像にあえて小馬鹿にするような音楽を当てている。合成も結構粗い部分があるのだが、この映画に関しては良い効果をだしていると思う。所詮、お伽噺の世界と教えてくれているみたいだった。

2.恩人の妻・レイを演じたシャーリーズ・セロンがまたしても良い芝居を見せてくれる。「告発の行方」でも書いたのだが、本当に向こうの女優は綺麗で演技もピカイチである・・・相当な競争率で生き残ってきたであろう自信と実力を兼ね備えている。とにかく、途中でアッとおどろく役に変わってしまうのだが普通の妻からの見事な変身に「上手いな〜、綺麗やな〜」と感心してました。やっぱり向こうの役者って完全にその役になりきっているから良いんだと思う、日本の若手なんてどこか恥ずかしがってたり、逆にそれを振り切るかのように大げさな芝居になってる場合が多い。先日、緒形拳が無くなったが、やっぱり良い役者ってその役になりきっているんだと思う。


<BAD POINT>
1.ハッキリいって、物語としてはハンコックが嫌われ者から街のヒーローになるまでで成立しているのだが、いかんせんここまでが約1時間弱で構成されているために、そのあとの神としての夫婦の戦いが蛇足に見える。ここは前半のダメップリの面白さをもう少しひっぱりつつ、ハンコックが人々に受けいられていく為の障害にもう少し知恵を絞った方が良かったのではないだろうか?ハンコックがなぜ超人なのかという事は、この手の映画であればあまりどうでも良いと思うのだが。
(IE5)


ハンコック - goo 映画


新たなタイプのヒーロー映画


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中身はお子様向け漫画映画であった・・・



またしても人気漫画の映画化である。デトロイト・メタル・シティ(以下DMC)は1巻だけ読んだことがあるのだが、個人的には内容よりもその世界が俺の青春時代とリンクしている事に馴染みがあった。映画も現代の話では無く、90年代前期〜中期ぐらいの音楽シーンを背景にしているので安心した。冒頭からなんとカジヒデキ本人が出演して歌っているのが個人的にはちょっと感動・・・できれば短パンで歌っているかどうかを確認したかった。カジヒデキの他にカヒミ・カリィやコーネリアスなどの名前も出て来て、当時のヨーロピアンなニオイを感じさせた「オシャレ系」アーティスト達を懐かしく思い出した。

主人公・根岸崇一=ヨハネ・クラウザー・二世(松山ケンイチ)が憧れるそれらオシャレ系の音楽とは、まるでその対極にあるかのような描かれるデスメタル界・・・中・高時代にへヴィメタルに嵌っていた俺としてはデスメタルも片足突っ込むくらいは聞いていたので、へヴィメタル=悪の根源という単純な描かれ方には疑問符がついた。まぁラストでKISSのジーン・シモンズが(本人はベーシストなのに)ギターバトルを繰り広げてくれたので溜飲は下がったのだが、全体的にそういったテーマを語るまで到っていないレベルの作品と感じた。言い方を選ぶなら、これは完全に子供向け映画だったのだ。


<GOOD POINT>
1.内容とは関係ないのだが、オープニングが中々カッコイイ!シルエットに浮かぶDMCのメンバーとコウモリが織りなす華麗な映像はとても気持ちを高ぶらせてくれる。日本映画ではなかなかこういったオープニングって見当たらないのだが、文句なくここまでは楽しませてくれた・・・始まってまだ5分くらいだが。

2.ライブシーンでクラウザーが叫ぶときにそれに併せてバババッと光る照明が良い効果をあげている。演奏自体はプロがやっていると思うので音楽は本物、となれば演じる方は如何に本物に劣らないようにパフォーマンスを繰り広げられるかという事に尽きると思うのだが、そう言う意味ではクラウザーは満点だ。逆に他の二人はいてもいなくても良いという位に存在感が無いのだが。あと観客も一生懸命に拳を振り上げて頑張っていたのは拍手を送りたい。

<BAD POINT>
1.まぁ肝心の物語の方は全くなっていない・・・ハッキリ言って鑑賞に堪えるエピソードは皆無に等しいといってよい。つまりはこの映画はビジュアル的な面白さを楽しむしかないのだ。葛藤もなければカタルシスも無いのは当然であるが、子供にとってはこういったビジュアルで見せながら、善と悪がクッキリしている話が丁度良いのではないかと思われる。まぁ俺が座った回の観客に子供は一人もいなかったのだが・・・。どちらにしても、この脚本を元に本気で勝負しようと思っていたならかなりヤバイだろう、今回も原作の人気に頼りっぱなしだったに違いない。
(IE5)


デトロイト・メタル・シティ - goo 映画


予告編はいいデキなんだが・・・


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蒼井優の魅力が最後まで引っ張ってくれる映画


監督は「タカダワタル的」「月とチェリー」など若手女性監督として注目を浴びるタナダユキ監督、「さくらん」の脚本をはじめ殆どの作品を自ら脚本しているが、オリジナル作品は今作が初めてということで気合いが入っていることが伺える。そして主演・鈴子に蒼井優を起用出来たことがこの映画の行方を決定づけた。良くも悪くも女性向け映画になっている。

まぁ・・・このタイプの映画って評価が分かれると思うんだけど・・・主人公がちょこっとだけ成長している映画っていう言い方が一番当たっていると思うが、これを面白く感じる事ができるかできないか?多分、今作だけで言えば女の子の「うん、分かる分かる」という声だけが聞こえてきそうな気がする。

<GOOD POINT>
1.鈴子が百万円を貯めながら各地を渡り歩く物語なのだが、構成的には三話のオムニバス形式的である。その二つめのエピソードである田舎町の物語が良かった。桃農家の長男を演じるピエール瀧がホントに良い味を出している。今まで観た中でも一番いい演技をしているんじゃないかな?実際にこういう図体がでかくてオドオドしたアンちゃんっているし、その性格描写の描き方が良かったしエピソード自体もテーマがあって美しい風景と見事にマッチしていたと思う。


<BAD POINT>
1.とにかく大学生・中島(森山未來)が出て来る三つめのエピソードが全くいただけない。出会って間もなく告白するシーンになるのだが「おいおい、まさか告白かよ」と声が出てしまうくらいあっけない、しかも即OKでベッドイン。「また恋空かよ」と頭を抱えてしまった。まぁ実際に「恋空」ほど罪は深くないのだが、俺は告白するまでのプロセスを描く方が余程盛り上がると思う質なのだが、それを差し引いてもこの映画の二人はファンタジーである。それでラストも予想通り別れるわけだが・・・こんなに展開が読める物語って面白いかな〜?と。あと気持ちをセリフに出している事が多すぎると感じた、「そんなの言わなくても分かってるよ」と言いたくなるくらい馬鹿丁寧なのだ。逆に無言で身体の描写に徹して観客に感じさせる方が絶対に良いと感じた。

2.なんか全体的に画の明るさが低いと思うのだがどうだろう?意図的だとしても、暗すぎる・・・なんかこの手の物語に逆行するかのような暗さなのだ。個人的にはここにかなり違和感を感じて最初は「機械の調子が悪いんじゃないか?」とずっと思って観ていた。なんか「月とチェリー」も暗かったような気がするのだが・・・監督の好みなんだろうか?
(IE5)

百万円と苦虫女 - goo 映画


蒼井優の好きな人には最高の映画です。



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やはり人間は未知の世界にひかれてゆく生き物だ


納棺師・・・この映画を知って初めて聞いた職業だった。おそらく俺と同じ人は多いと思う。それぐらいにマイナーな職業を取り入れた物語である。よく映画でハウツー物と呼ばれる作品がある、引き合いに出されるのは伊丹十三作品(「マルサの女」「たんぽぽ」etc...)や周防正行作品(「シコふんじゃった」「Shall we ダンス?」etc...)などが代表的だ。 映画の序盤に見慣れない職業や物事を見せて、主人公をその舞台へ引きずり込んだりする。当然、最初は何も出来ない主人公が徐々にその世界で成長していくという構成。その成長過程でその珍しい世界を丁寧に教えていくという事もハウツー映画の大事な要素。これらの映画はかなりの取材と知識の上でないと面白くならない。少しでも嘘っぽいと緊張感が途切れてしまうのだ。

とはいえ、肝心のドラマが面白くなくてはなんにもならない。「調べるのに苦労したのは分かりますが・・・」と言いたくなる程に説明(ハウツー)部分が多すぎてバランスを悪くしている作品も少なくなく、どちらかというと「またこのパターンか」と思う事の方が多い記憶がある。つまりは面白く成立させるには難しいジャンルではあるのである。その中で今回の「おくりびと」は非常にそのバランスも良く、納棺師の世界に足を踏み入れた大悟(本木雅弘)や妻(広末涼子)、葬儀屋の社長・佐々木(山崎努)ら主要人物の芝居もとても良くて久々に日本映画らしい日本映画の傑作が生まれた。滝田洋二郎の代表作になる事は間違いなく、今年の日本映画賞にかなり食い込むのではなかろうかと思われる。


<GOOD POINT>
1.東京でチェロ奏者をやっているという大悟の設定は個人的には嫌な部類の職業設定なのだが、これを実に嫌み無く本木が演じている。勿論、本人の演技力もあっての事だが、やはり滝田監督の演出力が光っている。大悟のキャラは下手すると一本調子になりかねない感情の起伏があまりない役柄なのだが、これが映画の中で微妙な心の変化として表れていくのを感じることが出来た。この微妙な・・・という所ができる時点でやはりスクリーンから伝わってくる事は違ってくる。妻役の広末も良いんだな〜、やっぱり離婚後の彼女は良いわマジで。大人の演技がハマルって感じがする。

2.とにかく脚本は素晴らしい。しかも原作ものでは無くて完全なオリジナルの書き下ろしという所が絶賛に値する。しかも公開と同時に脚本を元に漫画化されたコミックが発売され好評ということだ。画が人気のさそうあきらという事もあるだろうが、良いシナリオだったら逆パターンで漫画化なり小説化が可能なのである。納棺師という珍しい職業というモチーフはあるのだが、話の中心は夫婦が離婚するかしないかというごくありふれた物語なのである。そして大悟も妻も物語の初めと終わりでは全く違った成長した姿があった。更に所々にクスリと笑えるユーモアが散りばめられているのが、この作品のレベルを更に高めていると言えるだろう。見終わったあとにケンタッキーが食べたくなること請け合いだ。小山薫堂は構成作家としても凄いが、初映画作品とは思えない凄い才能の持ち主であると改めて感じた。

3.音楽が耳馴染みがいいな〜と感じて「まさか・・・」と想いながらエンドロールを観ているとやはり久石譲だった。う〜ん、またしても久石譲か・・・と少し悔しくなったが琴線に触れるんだから仕方がないな。まるで子供の時に与えられたマクドナルドが大人になっても脳神経にやどっているかの様だ。でも良いんだから仕方がない。


<BAD POINT>
1.ラスト近くで大悟の親父を納棺するシーンで、役場の人間に怒る大悟を制止ながら「主人は納棺師なんです」という妻のセリフなんだが・・・ちょっとここだけが頂けない。まぁ観客に「私は夫の職業を認めました」と分かりやすく言いたかったんだろうけど、ここはセリフ無しで魅せるべきではなかったか?まぁ、ここまでで観客の大半は満足していただろうから問題ないのかもしれないが、個人的には少し残念。
(IE5)


おくりびと - goo 映画


モントリオール映画祭でグランプリを獲得、おめでとうございます!


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