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水準以上だが違和感もある
~'08ホラーサスペンス特集(4)
少女の首にハサミを突き立てるという「ハサミ男」による残虐な連続殺人が怒った。物語の主人公はこの「ハサミ男」が、自分の犯罪を真似た第3の殺人に偶然出くわすことから始まる。「ハサミ男」は、はからずも真犯人の捜査に乗り出すが……。大まかなストーリーは上記の通りだが、終盤にドンデン返しが仕込んである。面白いし引き込まれるが、これは賛否両論あると思う。
犯人が探偵役という功罪
この作品はのっけっから連続殺人犯が主役であることが知らされる。それもどうやら少々精神を病んでいる感じである。殺人犯が自分の殺人を真似た殺人に出くわすというのは面白いアイデアだと思うが、弊害として感情移入しにくいのである。話の引き込み方がうまいので、読みたくないほどではないが、確実に没入度が落ちるのは仕方ない。
残酷度はさほどない
タイトルがショッキングだが、思ったほど残酷でもなく、ジャンルとしては正統派のミステリに当たると思う。ただ、少々トリッキーな要素が多く、ドンデン返しはミステリファンにはお馴染みのあの手法だ。注意して読んでいると、後でなるほどと思うことも多く、そういう意味では非常に良く出来ているし、警察の面々など魅力的なキャラクターも多い。ただ、それらが好きかどうかと聞かれると微妙だと答えざるを得ない。
引用は程ほどに
作中に他のミステリの引用が多く登場するのだが、こういうのは引用だと分からないように引用するのが上品な手法だと思う。作中、あからさまに「え、こういうの知らないんですか」と登場人物がほかの人に話すが、それを知らない読者は間接的に馬鹿にされているのである。この辺が娯楽作品としてはマイナスだ。そもそも推理小説に他の推理小説の小ネタが登場するのは、いわゆる内輪ネタと呼ばれるものではないのか。
推理小説に対する不満
伝統的あるいは正統派と呼ばれる推理物には実は未だに馴染めない。物語を楽しむというより、作者が考えたトリックを「解かされる」感じが嫌いなのである。読書量が少ないので多分に偏見も混ざるが、概して人間ドラマが薄っぺらく、殺人の痛みや重みが軽視され、漫画的な探偵役が活躍する、というイメージがある。また、ミステリー好き以外を小馬鹿にするような印象もある。本作は、十分に楽しめるだけの内容があるが、上記に書いた特徴も備えていると思う。という訳で、作者のトリックに挑戦したいという方にはお薦め、逆にサスペンスとして楽しみたい方には微妙なところ、といった感じだ。
評価点:60点 クセのある推理もの
主人公が手を変え品を変え自殺しまくるのだが、これって本当に必要な設定なのだろうか。本当は死にたくないから無意識に手加減しているという設定だろうが、妙に気持ち悪いし毎回助かるのは「絶対当たらないマシンガン」みたいで違和感あり。
(KIURA)