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乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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akanbee0316.jpg小説は娯楽である

宮部みゆきは多才な作家だ。本格的なミステリから社会派作品、少年向けのファンタジーからゲームのノベライズまで何でも水準以上にこなす。私は宮部氏の作品は本当の娯楽小説の書ける作家のきちんとした仕事だと思っている。「あかんべえ」もその例にもれない。

文庫本の裏表紙にはファンタジー+ミステリ+人情味が絶妙に溶け込んだ、と紹介されているが、それにジュブナイル小説と怪談の要素も加えたい。絶妙に溶け込んだ=何か一つに偏っていないということもいえる。安っぽくならない程度に時代背景もしっかり描かれているが、「時代の空気」を表現することが目的ではない。ミステリ要素もあるが、謎解きが全てでもない。ホラーやジュブナイルな要素もあるが、それはあくまで味付け。

私は少女の成長物語として読んだ。子どもの時代、大人たちの世界は均衡が取れていてゆるぎないものに見えた。皆信頼できる人であり、悪人ははっきりしているのだ。しかし、その境界がぼやけ始める時、子どもは子どもで居られなくなる。その時の切なさ、哀しみ、そして、それを乗り越える強さが描かれていると感じた。

宮部氏の小説は、時に合わないと思うときもあるが、平均してバランスが取れている。きちんと次のページが気になって、きちんと落ちがつき、読後感もスッキリしている。それはまっとうな娯楽小説の証だと思う。ファンが多いのも頷ける。ただ、難をいえば設定が安直な気もするが、それも「読者を楽しませる」ことが主眼だと考えれば、大きなマイナスにはならない。悪人にどこか救いを残しているのも同じ理由だろう。

ハードな時代小説や、本格的な怪談好きには向かない。でも、気軽に異郷へといざなってくれる本作は、幅広い読者に薦められると思う。主人公おりんと一緒に、甘辛い不思議体験を味わって見られてはどうだろう。
評価:75点
コメント:もう少し大人向きでも良かったと思うけど、逆に言えば子どもでも楽しめます。中学生くらいの読者の方が共感できるのでは。

あかんべえ(Amazon):さわりが読めます。

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