乙事組(IE5/Kiura/Pine/MBU/Shinの5人)の共同メディア批評ブログ。ネタバレあり注意!
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人間の手で描ける領域は俺の想像を遥かに超えていた
上の看板にも使われているミレイの代表作「オフィーリア」。実はこの画を見て宮崎駿が次回作は全部手書きで行こう!と決めたという・・・となれば、観てみたい!と俺の変な好奇心が頭をもたげて足を伸ばした。確か宮崎駿は海外の美術館でこれを観ていたが、それが渋谷で観られるのだ。こういう時だけは都会住まいを有り難く思う。
それで実際に行ってみると展示数は60点ぐらいとやや少なめだったが、見応えある巨大なキャンパスも多く全体的に鑑賞する体力的なバランスは丁度良かった。平日の夕方ということもあり客も思ったほど多くなく、ゆっくりじっくりと鑑賞。とにかくこのミレイという画家の画の巧さにただ圧倒される、指のシワや腕の血管の浮き具合など、性別年齢でここまで的確に書き分けるかというぐらいに繊細なタッチで描かれている。
ミレイは19世紀の英国ヴィクトリア朝絵画の巨匠とされるが、その腕前は若いときから相当にレベルが高かったらしく、周りから注目を浴びていたらしい。晩年は逆にその巧さをぼかした・・・つまりは技と崩したような画になり違ったアプローチとテーマに取り組んでいく。それはそれで素晴らしいのだが、やはりその名声を高めた時期(ラファエル前派と呼ばれている)の代表作である「オフィーリア」は素晴らしかった。他の「マリアナ」や「木こりの娘」などにも共通されているのだが、とにかく生き生きした色と人間の微妙な表情が色々と観るものを考えさせる。
やっぱり、絵画は生で観ると全然違うなぁと改めて感じた。行って良かったな〜。まぁ宮崎駿がどこを観て手書きで行こうと思ったかは分からないが、手書きでここまで描けるんだということは驚きでもあり感動でもあった。
(IE5)
ジョン・エヴァレット・ミレイ展 公式ホームページ
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SWファンであっても厳しいかと・・・
我が永遠のスペース・オペラ「スター・ウォーズ」の映画シリーズが完結してから数年経過し、もはやこのシリーズの続編があるとしても蛇足としか思えないと感じていたが、やはり上映最終日が近づくにつれて心のどこかで焦燥感が発生し最終日の回に足を運んでしまった。ジョージ・ルーカスが作り出したこの世界を心から愛している自分にとっては「エピソード3」の感動を胸に抱いていたままの方が良いという予感があったのだが・・・蓋を開けてみると悪い予感は的中してしまった。
プロデューサーにルーカスが名前を連ねているが、もはや熱意は感じられなかったのは俺だけだろうか?シスの野望で感じたファンに向けての意地がやはり最後だったのでは無いかと改めて確認されただけだったと思う。全米ではそこそこの集客を収めたらしいが、アニメで続編をただただ続けていくことの意味は今の時点では見つける事が難しい。やはりアニメでやるならルーカスが監督に座り、映像化が不可能になったエピソード7〜9を作るべきと思うのがファンの唯一の願いだろう。その為の試作としてならこの映画の存在も価値が出る。オビワンもアナキンもアニメで表現できる事が分かった・・・ということはルークもレイアもハン=ソロも出来るということである。
MAYBE FORCE WITH YOU・・・。
<GOOD POINT>
1.映像はあまり観たことのないタイプのアニメだ。物体の質感はピクサー、人物の質感はディズニー、その融合という言い方がベストと思われる。人が出てこない宇宙での戦闘シーンは実写と遜色ないほどにリアルであり実写版の戦闘シーンがフルCGだとあまり変わらないんだなと認識させられた。しかしながら、アニメでありながらスター・ウォーズのトーンを見事にスクリーンに描いていたことには感心した。音のクオリティーも流石に本家ルーカス工房から直接サンプリングしているだけあって文句のつけようがなかった。戦闘シーンでタワーを登っていく巨大なメカの攻防は一見の価値有り。
<BAD POINT>
1.というわけで上記の様に画と音には文句はない・・・しかしこの点数ということは後にも先にも脚本である。今回はエピソード2と3の間の話であるということは前々の宣伝なので頭に入っているのだが、それでも内容は殆ど分からなかったしカタルシスもなければワクワク感も乏しい。唯一嬉しかったのはジャバ・ザ・ハットに親類と子供がいたことが判明くらいである。とにかくジェダイが強すぎるし、敵が弱すぎる。ハラハラするギリギリの戦いを少しは描いて貰わないと緊張感すら生まれないのだ。ライトサーベルの戦いももはやただの「チャンバラ」にしか見えず・・・刀を通した精神の戦いを描いていたハズのルーカスの思いは微塵も感じることはできない。
2.ラストのジャバ・ザ・ハットに子供を送り届けるシーンで、パダワンのアソーカが敵に阻まれて先にアナキンがハットに辿り着く前後の演出が本当になっていない。どうしてA:アソーカが戦いに勝った所まで見せるB:アナキンがハットの前で「まだアソーカ」が来ていないのかC:アソーカが無事にやって来る・・・という子供みたいな編集をしてしまうのだろうか?普通はアソーカが来れるかどうかというシーンと窮地に追い込まれたアナキンで引っ張っていくハズなのに・・・。90分の短い作品ながらとても長く感じてしまった。
(IE5)
スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ - goo 映画
予告編が一番カッコイイ
映画という遊びを教えてくれる作品
大林宣彦監督の尾道三部作の第二作が「時をかける少女」、いや〜実に20年以上の時を経て観たけど何一つハッキリしたシーンは覚えていなかった(笑)。とにかく原田知世のあどけなさにビックリ!素朴さが愛くるしく見えるという現代のアイドルが絶対に到達できない瑞々しさを醸し出している・・・しかし、こんなに可愛かったっけ?時代が女を作ると言われているが、今の時代より昔を尊ぶのは歳を重ねた証拠なのだろうか?
余談だが、アニメの「時をかける少女」に出て来る図書館で勤務する女性は、この原田知世が演じた芳山和子の20年後の姿らしい!彼女が「タイムリープなんて珍しいことじゃないのよ」と言った理由がようやく分かったので嬉しかった。声優もやってくれていたらサプライズだったのだが、さすがにそれは無かったな〜。
<GOOD POINT>
1.大林が初期にして絶頂期(つまりは早熟なのだが)に撮った作品だけあって、随所にキラリと光る演出があった。おそらく低予算の部類に入るだろうこの作品を逆手に取り、徹底して原田知世の魅力と知恵を絞った撮影方法で最後まで引っ張っている。ストップ映像のコマ送りなんて小学生の時に超能力系のテレビ番組で良く観た思い出があるが、この映画での使い方はそれらのレベルを遥かに超えて良い効果を出している。予算が無いのにVFXは当時の最先端を目指して取り組んでいたらしく、全体で約30秒程しか使われていないが「ウルトラマン」のオープニングの様な合成が作られていて、それはそれで効果を挙げている点も評価したい。
2.エンディングテーマを原田知世とキャストが一緒に唄うシーンはかすかに覚えていた!これはやはり当時も印象が強かったらしく、今観てもすごく良いエンドロールになっている。YOU TUBEで「時をかける少女」で検索すると観ることができるので是非チェックしてみてほしい。ユーミンは本当に才能あるな〜。ちなみに今思いだしたが、数年前に大林自身がリメイクした実写版があったが、殆ど知られずに上映が終わってたな。
<BAD POINT>
1.アニメ版を観てしまったから余計にそうなのだが、初めてタイムリープするまでが遅いので全体的に間延びした構成になってしまっているのが残念。まぁ時代的な事を考えるとこういったテンポが普通だったのかもしれないが。時をかけるのも一回だけだし、特に大きなタイムパラドックスも発生していないので緊迫感はゼロに近い。まぁそれでも観れてしまうのは、やはり原田知世なのである。当時、近所の兄ちゃん達が熱狂的になっていたのが今になって理解できた。
(IE5)
時をかける少女(1983)(1983) - goo 映画
愛の予感のジュブナイル(山下達郎じゃないよ)
甘酸っぱく懐かしいが紛れもなく現代のSFファンタジー
筒井康隆の原作を未だに読んでいないが、映画は小学校に観た・・・もう殆ど忘れてしまったが、教室で「お〜ゆ〜をか〜け〜る〜しょうじょ〜」と大合唱していたのは良く覚えている。まぁあれから20年も経っているのでもう一度観なければいけないとは思っていたのだが。それよりも先にアニメの方に触手が動いた、実はずっと観たかったんやな〜コレ、当時すこぶる評判が良かったのだが激務で見逃していた。しかも一度見逃すと忘れてしまったり、DVDならあとで幾らでも観るチャンスはあるからという感じでズルズルと先送りになってしまう性格が今日まで来てしまったのだ。
先日のスカイ・クロラで書いたように新鋭のアニメーターが出てこないという絶望的な状況の中で監督の細田守に期待する声は高まっている事は間違いない。かつてジブリの門を叩き落とされ、再度這い上がって「ハウルの動く城」を任されたがクビにされて再び地獄をみせられた男が三度目の正直として結果を掴んだのである。今までのテレビアニメでも評判は高かったらしいのだが、いかんせん俺のアンテナに引っかからないアニメばかりだったので今回が何もかも初見であって楽しみに観た。
<GOOD POINT>
1.結論から言えば大変面白かった。しかも懐かしいけど今まで観たことがないという不思議な感覚。自分なりに分析してみると、物語自体がオーソドックスに作られている反面、キャラクターは紛れもなく現代の高校生という振り幅が意外にも新鮮に映っているのではないかと感じた。つまり、昨今のテレビドラマで描かれる学園モノのストーリーで描かれる人物はとにかく分かりやすく誰が観ても良い人、悪い人で分けられて、物語も突飛な事件を起こして力業で解決していくジェットコースター式が殆どだ。しかしこの映画で「人はそんなに簡単な生き物ではない」という事を確認させてくれる。これは別に凄い事ではなく、本来の物語で描く基礎ではあるのだが・・・。
2.実写版の20年後の世界という設定として描かれているらしく、実験室やら男2人に女1人の3人グループなど実写版を再現するようなシーン(もしかしたら原作もそうなのかもしれないが)が組み込まれていて、この作品のファンなら嬉しい構成だと思った。そして確実に実写版より物語は面白く作られている、タイムリープ(時間跳躍)を駆使した複雑な構成とそれを何度も同カットを使用して織り交ぜながら巧みに観客を引き込んでいく手法は拍手モノである。「あ〜コレ、自主映画でもできそう!」と思わせるくらいの知恵を絞った名シーンが次々に展開されていくのだ。
3.主人公・紺野真琴のボーイッシュで魅力的なキャラに一層の命を吹き込んだのが仲里依紗の声だ。聴いてみないと分からないと思うがこれが微妙な声質なのである、この声のお陰で喜怒哀楽が微妙なバランスで表現されて最高のヒロインとなっている。TV「ハチワンダイバー」で演じたメイドの胸ばかりが強調されているが、この作品では本当に最高の仕事をしている。
<BAD POINT>
1.まぁ強いていえば未来からの転校生、間宮千昭(声・石田拓也)の存在が説得力に欠ける所だろうか?未来からやって来て現代が居心地が良いからついつい帰りづらくなってしまいました、おまけに恋もしちゃいました。というのは、未来の世界のルールを完全に犯しているに違いないな・・・と。でもこれって実写版もたしか同じなんやな〜、確か未来で待ってても記憶が戻らないんじゃなかったっけ?。やっぱり実写版をもう一回観てみよう。
(IE5)
時をかける少女 - goo 映画
やっぱりヒロインが魅力的だと映画は楽しい!
圧倒的な映像美と剥き出しの人間像が見事なロードムービー
最近は癖のある役者というイメージがあるショーン・ペンの監督作品。意外にも初監督は1991年と早く、監督としての道も早くから模索していたらしい。まぁ話題作はなかった為、俺も全くノーマークだったのだが、今作は大変素晴らしい映画でありショーン・ペンの熱い想いがスクリーンに溢れていた。やはりクリント・イーストウッドの活躍は多くの役者に監督への情熱を拍車にかけたらしく、このショーン・ペンの活躍もその炎を一層焚きつける事になるだろうと思われる。
やはりロードムービーは監督するなら一度はチャレンジしたいジャンルではなかろうか?俺はご多分に漏れず「イージー・ライダー」が最高傑作と思うのだが、自然を相手に時には孤独で時には心を通わせる仲間や女を相手にしながら自分探しを続けていくというシチュエーションは若者にとって堪らないのではないだろうか?
<GOOD POINT> 1.実在した冒険家クリストファー・マッカンドレス(享年24歳)の生き様をエミール・ハーシュが本当に良い演技を披露して我々に示してくれた、若干23 歳であるがこの存在感と魅力的な危うさを醸し出している。俺はこの役者を見てかつて同じ感覚を感じた事があったのだが、映画を観ながら中盤でようやく思い出した。そう若かりし日のレオナルド・ディカプリオにそっくりなのだ・・・良く観れば顔も似て無くもない。「タイタニック」の成功のあと世界のセレブに名を連ねて苦悩していくディカプリオ。過食気味で顔も丸くなり「顔がデカプリオ」と一部で呼ばれていた記憶も懐かしい。しかしながら「タイタニック」以前の彼は「ギルバート・グレイプ」「バスケットボール・ダイアリーズ」など非常に野性的な演技をしていて個人的にも評価が高かった。その良い要素がエミール・ハーシュにも感じられたのだ。まだ若いだけに一概に言えないが、レオ様と同じくらいに人気が出る要素は充分にあると思った。
2.悔しいがアメリカのパノラマは素晴らしい言葉で説明する事が空しくなるくらい強烈に美しい。ロードムービーで絶対条件である「素晴らしい景色」というハードルを楽々クリアし尚かつ物語とリンクしていくのだから手が付けられない。日本では絶対に捉えることのできない空気感も羨ましい。
3.編集の巧さが際だっている。主人公・クリストファーの行動を時系列に追って行くだけでは退屈になってしまうというロードムービーの落とし穴を見事にクリアしている。クリストファーの現在の動きと過去を交互に見せるのはありふれているのだが、注目すべきは彼と知り合った相手の時系列も追っていくという手法だ。この手法は初めてみたが、とても面白かった。あまり他の者にスポットを当てると物語自体が破綻するので、本当に絶妙なサジ加減でこのスパイスを利かせている。もしかしたら分からない人が多いかも知れないが、ロードムービーの新たな可能性を示してくれた。
<BAD POINT>
1.ショーン・ペンの好みなのかも知れないが、橋の上で林檎を食うシーンでクリストファーがカメラに向けておどけるシーンがあった。つまり芝居が中断されてエミール本人の素顔を見せる瞬間がスクリーンで発生したのだ。これを俺は全く評価できなかった。何か、映画では無くなってしまったのだ。あともう1シーン同じような撮り方をしていたが、監督として何を狙っていたのか最後まで疑問が残った。
(IE5)
イントゥ・ザ・ワイルド - goo 映画
生きることの意味を考え抜いた人生がここにある