[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
先取りした時代も読むのが遅すぎた
~'08ホラーサスペンス特集(8)
日常生活が何ものかに侵食されていく……という内容の表紙裏の紹介文に惹かれて購入したが、中身は完全なSF作品。宇宙船のエンジニアに憧れる少女が、崩壊していく世界の謎を探る。ホラー要素もあるのだが、一般的なホラーではなく、どちらかというとモンスター物に近い。そして、話のポイントは分かりやすく言えば某有名映画と全く同じだが、1986年に書かれているのでこちらの方が13年も早い。
昔懐かしいSF
ここの所、あまり日本人作家によるSFを読んでいなかったので、横文字名前の設定が懐かしい。対象年齢設定も完全な大人向けというより、中高生ぐらいがではないかと思う。近い雰囲気だと思ったのが、萩尾望都的SF世界(「11人いる!」など)だ。ちょっとテンション高めの会話劇はいかにもである。
途中で転回する
目次を見ると一目瞭然だが、途中で話の軸が大きく変わる。ここが一つの大きな山場である。このオチが前述した通り有名映画と同じなのだが、実は同じようなネタを自分も小説にしようと考えていたので、これはSF的には非常にオーソドックス(になってしまった)パターンなのかもしれない。当時の年代で読めば衝撃的だったのかもしれないが、何分20年以上前のSFである。「ああ、このパターンか」というのが正直な感想だ。
それなりに面白いが
途中の山場までは、幻想的な要素も含め少々退屈だった。作者がやりたいことは分かっているので、「その先」が気になるのであまり集中できない。一方、「その後」は漫画的な内容も含め脱力するのだが、一方でそこそこ楽しめないこともない。書かれた時代はコンピューターが未発達な状態だが、設定がそれ程科学的に精密でないのが幸いして、逆に古くなっていない。
ホラー文庫について
このホラー・サスペンス特集でも作品を探していると、よく角川ホラー文庫に出会うが、これがまた玉石混交過ぎて、ブランド買いできないのが辛いところ。「黒い家」や「ぼっけえきょうてえ」のような作品があるかと思うと「呪怨」があったりして、不用意に手が出せない。この作品も同じホラー文庫だが、ホラーというには少々苦しい。結末が少々荒っぽい気もするが、年代も考慮すれば、まずまずという所ではないか。
評価点:52点 普通のSF
あまり年代にこだわるのもどうかと思うが、テーマ的には10年くらい先取りしていたのではないかと思う。逆に言えば10年前くらいの流行ともいえる。ちなみに某映画とは(白反転します)マトリックスです。